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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

2023年3月の2点:『ライ・レーン』『キル・ボクスン』

3月は注目の劇場公開作が多すぎていつもの3本に絞れなかったので、あえて配信のみの新作2本にしました。 『ライ・レーン』(2023年・英国、レイン・アレン・ミラー監督) www.youtube.com 新作のラブコメ(rom-com)映画が配信公開されるのが割と増えてきたか…

『ブルース・ブラザーズ』をカーアクション映画として見返す

ykondo57.hatenablog.com 以前(↑上記参照)の記事に書いたように、アントマンの新作を見て、ハイスト映画を無性に見たくなり、その後数日くらいは未見だった映画をいくつか見て「口直し」をしたものだが、先日BSプレミアムにて放映していた『ブルース・ブラ…

在宅鑑賞日記④ 『エブリシング・エブリウェア~』とミシェル・ヨーのカンフー映画 (前)

某日 公開初日に『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を見た。内容以前に約140分という長尺に少し恐れをなしていたのだが、長さはそこまで問題にならなかった。もちろん2時間弱にまとめてもらった方が楽しめたとは思うが、A24映画として…

『エンパイア・オブ・ライト』あるいはオリビア・コールマンについての覚え書き(映画についての映画②)

最近映画についての映画が多い、というのは既に言われていることなのだが、脚本も兼任している監督たちが話し合って決めたことではないので、当然各々の作品における映画の扱い方も微妙に異なってくる。サム・メンデス監督の『エンパイア・オブ・ライト』の…

2023年2月の3点 『エンドロールのつづき』『Blue Giant』『別れる決心』

『エンドロールのつづき』(パン・ナリン監督) 光の集合としての映画、フィルムの総体としての映画、という映画の物質性の本質に迫る素晴らしい作品だった。フィルム上映がデジタル上映に取って変わられる中、用無しになったフィルムはどこへ行ってどうなる…

映画という光の魔法に魅せられて『エンドロールのつづき』(映画についての映画①)

ランキング参加中映画 映画愛に関する映画となると、郷愁的か湿っぽい映画になりがちだろう、とか『ニュー・シネマ・パラダイス』のような類の映画か、などと思ってしまうが、『エンドロールのつづき』はより根源的なレベルで映画という光の魔法に迫る良作だ…

2023年1月の3点 『非常宣言』『シー・セッド』『舞妓さんちのまかないさん』

今年も毎月、良かった作品を3本挙げることとします。 『非常宣言』(ハン・ジェリム監督) 下の記事に書いたこと以外を付言すると、foot chase(徒歩での追跡)から、自然にcar chaseに流れ込み、しかもその顛末を車内のワンショットで撮ってしまう辺りがなぜ…

在宅鑑賞日記③ アントマン3とお口直し映画

某日 『アントマン&ワスプ:クアントマニア』を昨日見た。評判の悪さほど悪くはなかったものの、やはりアントマンの面白いところは盗みの場面やその後のカーチェイスだと思うので、コミカルなケイパー/ハイスト映画が見たくなり、『いつもの見知らぬ男たち』…

『別れる決心』について考えるために --- 映画評論まとめ

ネット上で読めるものに限定して集めました。 bunshun.jp 星取り表、かなり高評価のようです。 my.ebook5.net 月永理絵の連載「映画にぶらぶら」(20ページ)にて評論があります。 www.asahi.com 同著者による朝日新聞の評論文。書き分けられた内容を読み比べ…

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』アシスタントたちの上げた声

言わずと知れた『大統領の陰謀』(1976年) や、スピルバーグの秀作『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2018年)など、記者の奮闘を描いた映画は数あれど、今回の場合は『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年)が近いのかもしれない。『SHE SAID』がフ…

在宅鑑賞日記②

X日 マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルより『ブートレッガー 密売人』(2021年)。当オンラインフェスティバルでようやく「当たり」の映画を見ることができた。難しい問題を扱っていながら、過剰なバイオレンスやサスペンスに傾倒することなく、異様な…

在宅鑑賞日記①

X日 昨年見損ねた新作を見ようと思い、まずデイビッド・O・ラッセルの久々の長編『アムステルダム』。あまり評判が良くなかった理由は分かるが、楽しめなくはなかった。豪華キャストだとは聞いていたので、次は誰が出てくるんだろう、とワクワクしながら前半…

『パーフェクト・ドライバー』カーアクションから離れるということ、そして小道具が機能しているということ 

一般的な意見ではないかもしれないが少なくとも自分にとって、21世紀の逃がし屋映画と言えばすぐに思い浮かぶのが『ドライブ』と『ベイビー・ドライバー』だ。1月に公開が始まった韓国映画『パーフェクト・ドライバー』を見ているとき、この2作が常に念頭に…

ドラマの中の映画(『キングスマン』in『イルタ・スキャンダル』)

『イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~』 現在Netflixで配信中の韓国ドラマで、「高い人気を誇る数学講師の講義を受けたいという娘のため、し烈を極める私教育の世界に飛び込んだ愛情深い母親」(Netflix公式)を主人公とするラブコメ。その講師の講義…

71-5【MOVIE CYPHER10「すずめの戸締まり」大百科】 ●MC:柳下毅一郎 x 三留まゆみ x 高橋ヨシキ

music.amazon.co.jp 評判の邦画の筋を、柳下毅一郎と三留まゆみが丁寧に説明しようとするが、あまりにも荒唐無稽な話の設定や、論理的に説明しようがない展開に高橋ヨシキに困惑するというのがとても可笑しい。

『非常宣言』娯楽大作として確かな出来のパニック映画

新年早々ものすごいパニック映画を見ることができた。 本作でソン・ガンホとイ・ビョンホンが地上と空中で死闘するのは、飛行機という逃げ場のない閉鎖空間で起こるバイオテロだ。機内にばらまかれたウイルスは、空気感染するもので、感染後速やかに死をもた…

2022年新作映画ベスト10

① NOPE/ノープ② ウェディング・ハイ③ 偶然と想像④ MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない⑤ パリ13区⑥ Coda コーダ あいのうた⑦ トップガン マーヴェリック⑧ RRR⑨ The First Slam Dunk⑩ ペトロフ家のインフルエンザ 2022年は劇場で55本…

『私だけが知らない』【時間移動と愛 その2】

ykondo57.hatenablog.com 時間移動と愛というテーマと言えば、『君だけが知らない』も良かった。 事故の影響で記憶喪失になり、幻覚で未来が見えるようになった女性が事件に巻き込まれていく姿を描くサスペンス。主人公のスジンを「サイコだけど大丈夫」のソ…

『ザ・ファイブ・デビルズ』【時間移動と愛 その1】

〈あらすじ〉 フレンチアルプスの麓にある小さな村、ファイブ・デビルズ。8歳の少女ヴィッキー(サリー・ドラメ)は、母ジョアンヌ(アデル・エグザルコプロス)と父ジミー(ムスタファ・ムベング)との三人暮らし。ずば抜けた嗅覚を持つ彼女は、大好きな人…

『シー・ハルク』最終話 配信ドラマとしての長所

(シーズン全体のネタバレあり) マーベルのドラマで常に問題としてあるのが、最終話直前に駆け足で敵役の陰謀が明らかになり、大々的な最終戦へ突入していくという展開である。この「第三幕問題」(the third-act problem)とよく呼ばれる問題は、もちろん近…

【11月はノワール月間 #noirvember】④ 『甘い毒』(1994) 社会に負けないファム・ファタール

(結末部分に触れています) 原題はThe Last Seduction 、つまり「最後の誘惑」である。ただ、その直訳だとスコセッシの映画になってしまうので、『甘い毒』というタイトルに落ち着いたようだ。本作は日本で未公開で、ビデオスルーとなっている。 本作はいわ…

時を繰り返す社員たち『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

「V8を讃えよ!」ではなかった 100分未満、もっと言えば90分未満の映画をまず嫌いになれない、というところが自分にはある。本作も上映時間が82分という前情報を知り、期待に胸を膨らませていた。結論から言えば、とても楽しい映画だった。タイムループもの…

新作映画の画面の暗さと色の問題

『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』を鑑賞中、ほぼ完全な暗室で映画を見ているにもかかわらず、「画面が暗い・・・」と思うことが多々あった。これはもちろんこの映画に限った話ではもちろんない。そういったことが先日見た動画でも検証されていた…

『キャシアン・アンドー』6話「目」&10話「道はひとつ」 

スターウォーズのエピソード4の前日譚である『ローグワン』のさらなる前日譚?誰が望んでたんだ?と思ってしまった企画『キャシアン・アンドー』。シーズン1だけで12話もあるし、丁寧ではあるが随分鈍重な感が否めないドラマシリーズではあったが、ハッとす…

2022年のMCU映画振り返り(ネタバレなし)『ワカンダ・フォーエバー』『マルチバース・オブ・マッドネス』『ノー・ウェイ・ホーム』

11月11日に封切りとなった『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』をもって、今年のマーベル・シネマティック・ユニバースの映画は全て劇場公開済みということになった。そこで今年の3作を振り返ってみたい(なぜ3作なのかは後述する)。一応各作品の核…

【11月はノワール月間 #noirvember】③ 『闇の曲り角』(1946)

後にシット・コム『ルーシー・ショー』の主演として、TVスターとなったルシール・ボールが出演している20世紀フォックスのフィルム・ノワールである。私立探偵ブラッドが、自分を密かに狙っている存在をボールが演じる秘書キャサリンの助けを借りながら、追…

『一流シェフのファミリーレストラン』 (The Bear) 7話 キッチン地獄をワンカットで見せる伝説回

食べ物、家族、仕事や人生をテーマにした新しいコメディーシリーズ。若きシェフのカーミーとともに働くのは一筋縄ではいかないスタッフたち。店や自分自身を変えようと奮闘するうちに、スタッフたちは彼にとっての大事な家族となる。 (ディズニープラス公式…

【11月はノワール月間 #noirvember】② 『クリムゾン・キモノ』(1959)

tinyletter.com アメリカの批評家Angelica Jade Bastienのニュースレターにて紹介されていた異色のノワールということで見てみたが、とても面白かった。 Noir is an exceedingly fascinating, rich genre to use toward interrogating race. This holds true…

【11月はノワール月間 #noirvember】①『ローラ殺人事件』(1944)  

11月は #noirvember (noir+november) ということで先日オットー・プレミンジャー監督の『ローラ殺人事件』再見。noirvemberの提唱者でもあるMarya E. Gatesが米国ラジオ局のNPRのインタビューにて指摘するように、紛れもなくノワールでありながら、ファム・…

2022年10月(に鑑賞した)3点

10月のベスト3点は以下の記事に挙げた↓ ykondo57.hatenablog.com 10月はほとんど新作を見られず、結局3本しか見られなかったので以下に3本とも挙げる。 『犬も食わねどチャーリーは笑う』(市井昌秀監督、日本) 「旦那デスノート」で書かれることよりも、…