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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年ベスト10

今年は劇場公開作を58本見た。ベスト10は以下の通り。 ①ラスト・ナイト・イン・ソーホー ②ドライブ・マイ・カー ③先生、私の隣に座っていただけませんか? ④サマーフィルムにのって ⑤アメリカン・ユートピア ⑥キャンディマン (2021) ⑦クワイエット・プレイス…

2021年10月の3点 

『アイダよ、何処へ?』(ヤスミラ・ジュバニッチ監督、ボスニア他) 同監督の『サラエボの花』は未見なのだが、この映画には圧倒された。窓の外を眺める横顔、そしてフェンスごしに見える顔を真正面で捉えるショットがとても印象的だった。ちなみに、本作にお…

韓国のデスゲームドラマにおけるノスタルジーとアメリカ 『イカゲーム』小論

近年、世界で最も話題になった韓国映画が『パラサイト』だとすれば、今年最大の韓国産の話題作は本作だということになる。ともすれば、韓国社会の格差が注目されるのは当然のことであり、その点に関しては既に日本語の評論もあるので、今回は「ノスタルジー…

『サマーフィルムにのって』時代劇と青春恋愛映画は通じ合える

主人公ハダシは大の時代劇好きだが、高校の映画部で自分の撮りたい映画が撮れていない。その映画部では、来る文化祭にて上映予定の恋愛映画を撮影中だからだ。その青春映画に対抗すべく、SFマニアのビート板と剣道部のブルーハワイ2人とオリジナル時代劇を独…

2021年9月の3本

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』 ykondo57.hatenablog.com 今月はオリジナル脚本3本の映画を選んだ。 『先生、私の隣に座っていただけませんか?』で、やはり2時間以内で初めて出会う登場人物たちの人生に入り込んで、ともに泣き、笑い、気づけ…

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』相互反応する漫画と映画(ネタバレあり)

一応忘備録として映画レビュー用SNSのLetterboxdに2021年度映画鑑賞作に暫定的なランキングをつけているのだが、9月末時点でトップ3にあるのが、『ドライブ・マイ・カー』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『サマーフィルムにのって』の邦画3本だ…

『プロミシング・ヤング・ウーマン』復讐の天使カサンドラ

個人的な予想とは大きく異なる内容であり、なおかつ今年最も鑑賞後に考え続けていたのが『プロミシング・ヤング・ウーマン』だった。インタビューでも監督エメラルド・フェネルは主人公キャシーを「復讐の天使」として描くため、あえて以下の写真のような演…

2021年8月の3点

『ザ・スーサイド・スクワッド』 リブートとしての成功例。DC映画は良くも悪くも本当に何を繰り出すのが全然読めない。 ★評論 Morris, Borgan. "Is The Suicide Squad the beginning of the end for the superhero movie?" (The Guardian) www.theguardian.c…

『スーサイド・スクワッド』評論抜粋拙訳 (スーパーヒーロー映画は西部劇と同じ運命を辿るのか?)

ジェームズ・ガン監督の『ザ・スーサイド・スクワッド(副題略)』(2021)を先日観た。大作映画の「リブート」こと「やり直し」ほどみっともないこともないのだが、このバージョンを鑑賞できたことには感謝しかない。 鑑賞後色々感想や評論を読んでみたが、以…

Letterboxdのスタッフ・セレクション(2021-08-16時点)

去年から使い始めているLetterboxdは、運営スタッフの「6選」が随時更新されている。更新時期をあまり把握できていないのだが、変わるたびにメモしている。 CREW PICKS 今日の時点では上記の通り。劇場にて上映中か、近日にストリーミングが始まった作品が6…

「夏の自由研究」メモ

毎年この頃になると、一応「夏休み」なのだから、色々勉強しようと気になる。例えばアメリカでも「夏の読書リスト」や「サマースクール教材」がネットでも散見されるようになっているので、メモ程度にいくつか以下に挙げておきたい。 www.nhk.jp www.nhk.jp …

2021年7月の3点

どうやらパンデミック下の日本の首都にて、世界中からアスリートが終結する4年に1度の大イベントが今なお強行されており、その存在を思い出す度に不愉快な気持ちにさせられる*1のだが、とりあえず7月見た作品から3点選んだ。 ☆『プロミシング・ヤング・ウー…

『ブラック・ウィドウ』における楽曲「アメリカン・パイ」の意味

『ブラック・ウィドウ』を見ていて、驚いたと同時に強い感銘を受けたのは以下の曲が回想シーンで使われていたからだ。 www.youtube.com 『アメリカン・パイ』は1971年にアメリカのシンガー・ソングライター、ドン・マクリーンによるヒット曲である。フルバー…

フローレンス・ピュー in『ブラック・ウィドウ』

※【ブラック・ウィドウ パート1】と銘打っておきながら、今回の投稿ではスカーレット・ヨハンソンの話は出てきません。あしからず。 フローレンス・ピューの目覚ましい最近の活躍ぶり! 2019年の11月に『ファイティング・ファミリー』(スポーツ映画の傑作) …

全米各紙による2021年前期ベスト映画作品*5

" data-en-clipboard="true">7月と言えば、各紙?の前期ベストが公開され終わるタイミングなので、忘備録を兼ねていくつか以下に列挙します。記事選定基準は特にありませんが、やはりほとんどが日本ではまだ公開されていないようです。個人的には『バーブ&ス…

『ゴジラvsコング』: つくられた二項対立

(ネタバレあり) 言わずと知れたゴジラとキングコングという「知的財産」(intellectual property, IP)が直接対決するモンスターバース完結作である、が・・・・? 迫力たっぷりのアクション 四の五の言う前にまず確認しておきたいのだが、これは怪獣映画な…

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』

音を立てると突如襲い掛かる謎の怪物への反撃法が既に判明している本作では、得体の知れない脅威が生み出すホラー要素というよりも、家族(母、長女、長男、そして生まれて間もない乳児)が別々に行動を取ることにより、互いの身を十分に守れる状況にないこと…

Stones in Movies Part II: ローリング・ストーンズと映画 再び

ykondo57.hatenablog.com ↑にも書いたのだが、『クルエラ』は面白かった。面白かったのだが、冷静になって考えてみると、音楽面で違和感も残る。たしかに自分でも知っている「クラシック・ロック」をがんがんかけて物語の駆動感を維持していたが、最後のシー…

2021年5月の3点

・『ファーザー』 「感動作」かどうかは実際に見てみて決めてもらえればいいと思う。個人的にはそういうことではあまりないと思ったのだが。一見地味そうなイギリスのヒューマンドラマだが、作品の中身自体はなかなかショッキングで、描き方によっては煽情的…

『ジェントルマン』(2020・英)

ガイ・リッチー作品を全く通ってこなかったので、『ジェントルマン』が初鑑賞作品となった。時系列を巧みにシャッフルする構造に我々は既に慣れ切っているがそれでもその特有の面白さは感じられた。さらに映画の中の「映画みたいな物語」として本筋をヒュー…

2021年4月の3点

・『21ブリッジ』 チャドウィック・ボーズマンの劇場公開作としては最後の作品。全てがタイトかつスピーディーに展開する99分。本作を理解するためのヒントは中盤に登場する「パララックス・ホテル」。 bunshun.jp ・A Question of Silence Antonia's Lines…

『ミナリ』アジアン・アメリカン・ドリーム

『ミナリ』は、基本的に少年デビッド(写真左から2番目)から見た「暴走父ちゃん」の物語である一方で、クロースアップが父ジェイコブよりも母モニカの方に多かったように思えた。それが正しいのであれば、映画が寄り添おうとしてるのはむしろモニカの方だと…

郊外で私は喪に服す ー『ワンダヴィジョン』という「アノマリー」についての覚書 (後)

" data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> 本稿のタイトルで私は『ワンダヴィジョン』を「アノマリー」と表現している。「アノマリー」には「変則的なこと」「逸脱性」などの意味がある。マーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)にお…

郊外で私は喪に服す ー『ワンダヴィジョン』という「アノマリー」についての覚書 (前)

" data-en-clipboard="true"> マーベルの新作ミニ・シリーズが、『ワンダヴィジョン』という、郊外に住む中流階級の白人カップルのドタバタ劇、つまり往年のシット・コム(ファミリー・ドラマ)になるという知らせが飛び込んできたときには、驚いたと同時に…

パンデミック・ムービー Case 1 - 『マルコム&マリー』

去年からコロナ禍により通常の映画製作が出来なくなった中、それでもわずかながら新作映画は生まれており、我々の自宅の画面に届いている。1918年のインフルエンザ大流行の後、大衆文化がその深すぎるはずの爪痕を見せずにいたことは、今回のパンデミックに…

2021年2月の3点

・WandaVision 第1話~第8話 (Disney+) 現時点で結末を知る由はないが、久しぶりのマーベル新作に相当満足してしまっている自分がいることに気づく。『エンドゲーム』を見終えた後に「もうマーベル映画は見なくていいな」と思っていたのだが、期せずして発生…

『すばらしき世界』

西川美和監督作品は、『永い言い訳』をアマゾンプライムで見て、「おお、何かすごい映画見たな・・・」と思ったのが初めてで、『蛇イチゴ』や『ゆれる』は後から見て圧倒されました。新作『すばらしき世界』が劇場で初めて鑑賞した同監督作品でした。 『蛇イ…

未公開映画3本ウォッチ (Queen & Slim, Judas and the Black Messiah, The United States vs. Billie Holiday)

アメリカの2月はBlack History Month(黒人歴史月間)とされており、各種ストリーミングのプラットフォームでも、本数はあまり多くないなりに、関連映画を紹介していることがある。そこで日本では未公開作品を3本挙げてみる。更新は随時します。 Queen & Slim …

『ワンダヴィジョン』第5話まで 重要ツイート、記事抜き書き

【『ワンダヴィジョン』の第5話までのネタバレがあります】 2020年は劇場からマーベル映画が消え去った年でもあった。未だに延期された作品が戻ってくるのが分からないまま、Disney+のミニシリーズ『ワンダヴィジョン』が先月より配信開始している。こちら…

今すぐ観られる2021年のアカデミー国際長編映画賞出品作

2021年のアカデミー国際長編映画賞に出品され承認されたのは93本でした。ショートリスト(ノミネートの前段階)は例年の10本から15本になり、そのリストが発表されるのは2/9だそうです。 その中でも何本かは既に日本で見られるようですので、以下に私が確認…