11月11日に封切りとなった『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』をもって、今年のマーベル・シネマティック・ユニバースの映画は全て劇場公開済みということになった。そこで今年の3作を振り返ってみたい(なぜ3作なのかは後述する)。一応各作品の核心に触れる記述は避けたつもりである。
『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』(ライアン・クーグラー監督)
ティ・チャラ王を欠いたワカンダで出来るだけのことを尽くしたのが本作だと思う。主人公は妹のシュリであるが、どちらかと言うと戦う女性たちの群像劇として構成されていた印象を受けた。文字通りの主戦場が海にシフトしたことで、前作と続編とのアクションの差異化が図られていたことも良いと思った。画面が暗すぎると思える場面が多々あったし、161分という尺の長さを感じせざるをえなかったが、それでも堂々たる出来のマーベル続編映画であった。
『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』(サム・ライミ監督)
今年唯一劇場で2度見た映画である。上記の作品よりも脚本の瑕疵が目立つ作品ではある。『ワンダヴィジョン』を見た上で本作に臨んだ観客からすれば、ワンダの行動原理には疑問が残る。しかし、予想以上にスカーレット・ウィッチがフィーチャーされているのは嬉しい驚きであった。また、さすがサム・ライミだけあってアメコミ映画としての質は確保されており、彼ならではの「手ぐせ」を十分に満喫できる作品ではある。128分で(一応)全てを語りきってしまう力業も◎。今年のMCU映画では本作が一番のお気に入りである。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(ジョン・ワッツ監督)
本作は全米では2021年の12月に公開されており、日本公開までネタバレを避けるのに随分苦労した。中盤の展開には本当に胸が熱くなったし、最後まで目の離せない展開ではあった。しかし、「最終作にしてオリジン・ストーリー」という声もあったように、これまでのスパイダーマン映画で真っ先に描いてきたことをあえて省略してきたMCU版スパイダーマンが結局そこに立ち返ってしまったことは引っかかった。また、恐らくベスト・スパイダーマン映画として、ライミの『スパイダーマン2』(2004年)と双璧を成しうる(?)『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)が既に見事な手さばきで行ったことが、『ノー・ウェイ・ホーム』の最大の見どころと言えるだろう。しかし、本当にそれで良かったのか?
なお、『マイティ・ソー ラブ&サンダー』は未見だし、今年は見ないだろうと思う。MCU映画を劇場で見ることはもはやここ数年の習慣と化していることは事実だが、見ない映画もたまにはあっていいと思った次第。