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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

『ブルース・ブラザーズ』をカーアクション映画として見返す

 

ykondo57.hatenablog.com

 以前(↑上記参照)の記事に書いたように、アントマンの新作を見て、ハイスト映画を無性に見たくなり、その後数日くらいは未見だった映画をいくつか見て「口直し」をしたものだが、先日BSプレミアムにて放映していた『ブルース・ブラザーズ』(1980年、ジョン・ランディス監督)を久しぶりに再見して、上記作では見られなかった派手なカーチェイスのすさまじさにまたもや圧倒された。

 もちろん『ブルース・ブラザーズ』は、豪華なゲストたちに彩られた優れた音楽映画として、そして今なお続く人気コント番組「サタデー・ナイト・ライブ」の出演陣を中核とするドタバタ劇として知られている訳だが、その喜劇的要素の多くが「過激な器物損壊」に依るもので、ここまでCGなしでやってのける精神性に、2023年に生きる一人の視聴者としてテレビの前で笑い転げると同時に感じ入ってしまった。

 前半では、ジェイク・ブルースとエルウッド・ブルース(主人公の兄弟)が合法で買い受けた旧型のパトカーで警察から逃げるべく爆走を続ける訳だが、やがて二人はそのカーチェイスの場をショッピング・モールへと移す。ショーウィンドウを大破しての突入で口火を切ったと思えば、追われる側も追う側もそのあとはモールにあるありとあらゆるものを破壊し猛進する。少しは避けてもいいものを、純然たるコメディのため、車はためらいなく損壊し、悲鳴を上げ逃げ惑うモール客たちを横目に走り続ける。

 The shuttered Dixie Square Mall’s interior is brought back to life for “The Blues Brothers” movie.

 ここだけでも素晴らしく不真面目なカーアクション映画として歴史に残っても良さそうなものだが、クライマックスはそれをさらに上回ってくる。そもそもこの映画には、孤児院で育った兄弟が、その建物の資産税5000ドルをどうにかして用意する必要に迫られ、昔のバンドを再結成し、コンサートを大成功させなければならない、という前提がある。しかも、ジェイクは出所したばかりで、エルウッドも前科者であるため、また易々と捕まるわけにはいかない。したがって、その再結成コンサートも、素晴らしいパフォーマンスを1曲フルで見せたと思いきや、次の曲でフロントマン2人はステージから姿を消し、一帯を包囲し、逮捕の契機を伺っている警察にばれないようひっそりと逃亡を図る。

  そこでさらにスケールアップしたカーチェイスが展開することになる。今度は2人に   恨みのあるカントリークラブのバンドや、イリノイ州のネオナチも、大量のパトカーとともにブルース兄弟の後を追う。地を這うようにカメラが高架下での車の移動を捉えていくショットもなかなか好きなのだが、ここではとにかくすさまじい数のパトカーがクラッシュして動けない車が山積みになっていく。高速道路でトラックに突っ込んだまま 運ばれていくパトカーも出てくる。どう考えても数が多すぎてまともに対象の車を追えずに、あっという間に次々と車が不自然な形でスクラップと化していく様に可笑しみがあるのだろうが、これはコメディというジャンル内でしか出来ないことだ。前述のバンドやネオナチにもちゃんとしたオチが用意されている。とにかく驚くべきペースと数で「過激な器物損壊」描写が続くのだから、娯楽映画としてこれほどないおもてなしである。

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