遅ればせながらヴィム・ヴェンダーズ監督の『Perfect Days』を見た。その前は、アリ・アスター監督の『ボーはおそれている』を見ていたので、期せずしてニーナ・シモンの曲が肝心なところに二本連続でかかっていたので少し驚いた。
(以下、両作のネタバレあり)
"Feeling Good" in『Perfect Days』
早朝の陽光を顔に受け、涙ぐんだり笑顔に戻ったりを繰り返す主人公。彼の中には「良い気分(feeling good)」だと言えない不穏さと、平穏な日常への回帰の両方が渦巻いているように思えた。
"Isn't It a Pity" in 『ボーはおそれている』
この映画が「オデッセイ・スリラー」と紹介されていたのはうなずける。ホメロスの『オデュッセイア』が「帰郷までの壮大な道程」の話なのだが、いざ帰郷してからもまた大変なことになるからだ。この曲はその帰郷後にかかり、そこで母親の支配がどのような形で展開していたのか明らかになる。