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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

時を繰り返す社員たち『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

「V8を讃えよ!」ではなかった

 100分未満、もっと言えば90分未満の映画をまず嫌いになれない、というところが自分にはある。本作も上映時間が82分という前情報を知り、期待に胸を膨らませていた。結論から言えば、とても楽しい映画だった。タイムループものでありながら、日本のオフィスコメディ、つまり「お仕事映画」でもあるところが個人的には大変好みだった。

 タイトルにある通り、上司を含め、その部署で働く全社員が同じ一週間を繰り返していることにやがて主人公吉川朱海は気づく。その状況を上司に理解してもらうためには、社内のヒエラルキーを飛ばして、直接彼に報告してもうまくいかない。確実にメッセージを伝えるためには位が一つ上の人間から始めるしかない。この「上告制度」を忠実に守らないといけないという作品内のルールが、いかにも日本の労働環境の性質*1を表していて苦笑を禁じえなかった。

 さらに、脚本で上手いと思ったのは、その「上告制度」に入っていなかった人物がいて、その人なしでは上司を説得してもループから脱却できない、という展開があったところだ。小規模の集団の中ですら、省かれてしまうような人がいて、そのような人ともちゃんと団結して初めて本当の状況打破が可能になる。

 そして(これはこのブログで取り上げる邦画によくあるパターンなのだが)本作では創作行為が重要な要素となっている。未完成のものを素人の社員一同で完成させない限り、ループは終わらない。その完成したものも、粗削りながらとても胸を打つものとなっている。

 結局のところこのオフィスSFコメディの「ラスボス」は「中年の危機」だったと、無骨な表現でまとめられるかもしれない。そこもなかなか日本の会社らしい話だと思えた。

 

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*1:もちろんこの国に限られたことではないが