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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

2022-01-01から1年間の記事一覧

2022年新作映画ベスト10

① NOPE/ノープ② ウェディング・ハイ③ 偶然と想像④ MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない⑤ パリ13区⑥ Coda コーダ あいのうた⑦ トップガン マーヴェリック⑧ RRR⑨ The First Slam Dunk⑩ ペトロフ家のインフルエンザ 2022年は劇場で55本…

『私だけが知らない』【時間移動と愛 その2】

ykondo57.hatenablog.com 時間移動と愛というテーマと言えば、『君だけが知らない』も良かった。 事故の影響で記憶喪失になり、幻覚で未来が見えるようになった女性が事件に巻き込まれていく姿を描くサスペンス。主人公のスジンを「サイコだけど大丈夫」のソ…

『ザ・ファイブ・デビルズ』【時間移動と愛 その1】

〈あらすじ〉 フレンチアルプスの麓にある小さな村、ファイブ・デビルズ。8歳の少女ヴィッキー(サリー・ドラメ)は、母ジョアンヌ(アデル・エグザルコプロス)と父ジミー(ムスタファ・ムベング)との三人暮らし。ずば抜けた嗅覚を持つ彼女は、大好きな人…

『シー・ハルク』最終話 配信ドラマとしての長所

(シーズン全体のネタバレあり) マーベルのドラマで常に問題としてあるのが、最終話直前に駆け足で敵役の陰謀が明らかになり、大々的な最終戦へ突入していくという展開である。この「第三幕問題」(the third-act problem)とよく呼ばれる問題は、もちろん近…

【11月はノワール月間 #noirvember】④ 『甘い毒』(1994) 社会に負けないファム・ファタール

(結末部分に触れています) 原題はThe Last Seduction 、つまり「最後の誘惑」である。ただ、その直訳だとスコセッシの映画になってしまうので、『甘い毒』というタイトルに落ち着いたようだ。本作は日本で未公開で、ビデオスルーとなっている。 本作はいわ…

時を繰り返す社員たち『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

「V8を讃えよ!」ではなかった 100分未満、もっと言えば90分未満の映画をまず嫌いになれない、というところが自分にはある。本作も上映時間が82分という前情報を知り、期待に胸を膨らませていた。結論から言えば、とても楽しい映画だった。タイムループもの…

新作映画の画面の暗さと色の問題

『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』を鑑賞中、ほぼ完全な暗室で映画を見ているにもかかわらず、「画面が暗い・・・」と思うことが多々あった。これはもちろんこの映画に限った話ではもちろんない。そういったことが先日見た動画でも検証されていた…

『キャシアン・アンドー』6話「目」&10話「道はひとつ」 

スターウォーズのエピソード4の前日譚である『ローグワン』のさらなる前日譚?誰が望んでたんだ?と思ってしまった企画『キャシアン・アンドー』。シーズン1だけで12話もあるし、丁寧ではあるが随分鈍重な感が否めないドラマシリーズではあったが、ハッとす…

2022年のMCU映画振り返り(ネタバレなし)『ワカンダ・フォーエバー』『マルチバース・オブ・マッドネス』『ノー・ウェイ・ホーム』

11月11日に封切りとなった『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』をもって、今年のマーベル・シネマティック・ユニバースの映画は全て劇場公開済みということになった。そこで今年の3作を振り返ってみたい(なぜ3作なのかは後述する)。一応各作品の核…

【11月はノワール月間 #noirvember】③ 『闇の曲り角』(1946)

後にシット・コム『ルーシー・ショー』の主演として、TVスターとなったルシール・ボールが出演している20世紀フォックスのフィルム・ノワールである。私立探偵ブラッドが、自分を密かに狙っている存在をボールが演じる秘書キャサリンの助けを借りながら、追…

『一流シェフのファミリーレストラン』 (The Bear) 7話 キッチン地獄をワンカットで見せる伝説回

食べ物、家族、仕事や人生をテーマにした新しいコメディーシリーズ。若きシェフのカーミーとともに働くのは一筋縄ではいかないスタッフたち。店や自分自身を変えようと奮闘するうちに、スタッフたちは彼にとっての大事な家族となる。 (ディズニープラス公式…

【11月はノワール月間 #noirvember】② 『クリムゾン・キモノ』(1959)

tinyletter.com アメリカの批評家Angelica Jade Bastienのニュースレターにて紹介されていた異色のノワールということで見てみたが、とても面白かった。 Noir is an exceedingly fascinating, rich genre to use toward interrogating race. This holds true…

【11月はノワール月間 #noirvember】①『ローラ殺人事件』(1944)  

11月は #noirvember (noir+november) ということで先日オットー・プレミンジャー監督の『ローラ殺人事件』再見。noirvemberの提唱者でもあるMarya E. Gatesが米国ラジオ局のNPRのインタビューにて指摘するように、紛れもなくノワールでありながら、ファム・…

2022年10月(に鑑賞した)3点

10月のベスト3点は以下の記事に挙げた↓ ykondo57.hatenablog.com 10月はほとんど新作を見られず、結局3本しか見られなかったので以下に3本とも挙げる。 『犬も食わねどチャーリーは笑う』(市井昌秀監督、日本) 「旦那デスノート」で書かれることよりも、…

『バーバリアン』(2022, アメリカ) 民泊ホラーという新境地(ネタバレなし)

www.youtube.com 10月はハロウィン月間ということで、特に英語圏では新旧問わずホラー映画が話題に上りがちな印象がある。自身もそれを受けて自宅で鑑賞したのはほぼ米国産ホラーだった。その中でも印象に残ったのが、『バーバリアン』である。まずディズニ…

サンドラ・ブロック&ブラッド・ピットのバディ映画二本立て(『ザ・ロストシティ』&『ブレット・トレイン』)

www.youtube.com www.youtube.com 今年2022年は、ブラッド・ピットとサンドラ・ブロックが共演する映画が2本も日本で上映された。6月はラブコメ・アドベンチャー映画『ザ・ロストシティ』が、9月はアクション映画『ブレット・トレイン』が公開された。 ブラ…

2022年10月の3点(ホラーを中心に)

10月といえばハロウィン、ということで、大体この時期になるとホラーばかり見るような習慣が近年出来た。しかしながら、新作映画はほとんど見ることができなかったので10月の3点は配信作品のみである。 ①米Criterion Channelの"80s Horror"特集 ②映画『バー…

延期され続けた『ニュー・ミュータント』(そして公開すらされない『バットガール』)

満を持して見た。それほど期待していなかった分、大きな失望もなかったのが実感だ。『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』と同様に、90分未満で物語が収束するのは本作最大の強みだったと思う。 既にインタビュー等で言及があった通り、違う者同士が…

『シー・ハルク』前半(第1話から第4話まで) 所感

www.youtube.com ・「オリジン・ストーリー」は控えめにして、笑いを散りばめつつ、最低限のことだけ語ってしまう簡潔な語りが良かった。「キャプテン・アメリカいじり」はたしかに若干やり過ぎだったかもしれないが、本人の人となりが分かる描写だったとは…

『NOPE ノープ』 動物たちとスペクタクル

(ネタバレあり) もう先月のことになったが、『NOPE ノープ』は待望のジョーダン・ピールの新作である。本作は『ゲット・アウト』(2017年)『アス』(2019年)に続く長編第3作である。端的に言えば、本作は動物映画であり、モンスター映画である。『ノープ』…

『スクリーム』 (2022) 2020年代に世に問うメタ・ホラー

『スクリーム』(2022)を先日見た。日本では劇場公開されず、DVDスルーされた作品である。 スクリーム (2022) (字幕版) メリッサ バレラ Amazon 本作は、シリーズ第一作の『スクリーム』(1996年)と同題であるため、そのリブートやリメイクかと思っていたが、…

リコリス・ピザ PTAの描く1970年代のLA

リチャード・リンクレイターの描く60年代のテキサスでは、主人公の周りにいたのはNASAで勤める人たちばかりであったように(『アポロ10号 1/2』)、今回ポール・トーマス・アンダーソンの描く70年代のカリフォルニアでは、映画業界の人間ばかりが出てくる。こ…

『エルヴィス』大佐とウェルズ

最近音楽家の伝記映画について考えることが増えたので、ぜひ見なくてはと思い鑑賞した。 『エルヴィス』は、バズ・ラーマン監督独特の豪華絢爛なタッチでエルヴィス・プレスリーの半生を描いた伝記ものである。2時間半を超える作品であるため、若干冗長な箇…

『人質』(2021) このファン・ジョンミン「本人」の誘拐脱出劇はメタ的スリラー

www.imdb.com ファン・ジョンミンが本人役として誘拐されて、知恵と腕っぷしだけで脱出しなければならないーーーという、奇抜な設定には当初半信半疑だったものの、やはり俳優ファン・ジョンミンを巡る評価が結構本筋と関わっていたのは良かった。 最後は2年…