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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

コメディ

今年のフランケンシュタイン系映画はまだあるはず『哀れなるものたち』『Lisa Frankenstein』

ヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーン主演の『哀れなるものたち』(Poor Things)を見た。この監督主演タッグは短編も入れると三度目の共演らしい。自分もいいコンビだとは思う。『籠の中の乙女』『ロブスター』『聖なる鹿殺し』は後追いで、『女王陛下…

2023年の映画ベスト10

2023年のベスト10は、 ①バービー ②パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女 ③別れる決心 ④フェイブルマンズ ⑤ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい ⑥ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー ⑦SHE SAID/シー・セッド その名を暴け ⑧Blue Giant ⑨スパイダーマン:アク…

2023年8月の3点(『バービー』『あしたの少女』『ソウルに帰る』)

『バービー』グレタ・ガーウィグ監督、アメリカ 真っ直ぐに語られるフェミニズム的メッセージ、往年の名作へのオマージュやパロディ、そして何よりも観客を笑わせてくれる要素を持つ娯楽大作にして、長編は3本目のグレタ・ガーウィグが世に問うた現時点での…

機械仕掛けの「運命」:アルゴリズム対スパイダーマン(たち)

ykondo57.hatenablog.com (↑の続き)その二作品とは、スーパーヒーロー映画『ザ・フラッシュ』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のことである。前者ではフラッシュが新たに発見した自分の能力を使って過去に戻って母親の死を食い止めた…

在宅鑑賞日記 ⑥ 配信スルー映画を見て考えるジャンル論

某日 いつの間にか配信スルーになっていた『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』(2023年)を見た。嵐の夜に20代の若者たちが"Bodies Bodies Bodies"(bodyは死体の意)というゲームを行っていたら、本当に死人が出てしまう、という映…

『バービー』予告編について 郊外映画なのか?

www.youtube.com 当初、グレタ・ガーウィグがバービー人形の映画を撮ると聞いて、驚いていたのだが、今回『アクロス・ザ・スパイダーバース』や『ザ・フラッシュ』(2本については後日記事を書きます)の鑑賞前に見た『バービー』の予告編を見る限り、これは…

2023年5月の3本 『それでも私は生きていく』他2本

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:Volume 3』 ykondo57.hatenablog.com 『クリード 過去の逆襲』 ykondo57.hatenablog.com 『それでも私は生きていく』 劇場で見た初めてのミア・ハンセン=ラブ監督作になった。前作の『ベルイマン島にて』では、自身…

『ブルース・ブラザーズ』をカーアクション映画として見返す

ykondo57.hatenablog.com 以前(↑上記参照)の記事に書いたように、アントマンの新作を見て、ハイスト映画を無性に見たくなり、その後数日くらいは未見だった映画をいくつか見て「口直し」をしたものだが、先日BSプレミアムにて放映していた『ブルース・ブラ…

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』相互反応する漫画と映画(ネタバレあり)

一応忘備録として映画レビュー用SNSのLetterboxdに2021年度映画鑑賞作に暫定的なランキングをつけているのだが、9月末時点でトップ3にあるのが、『ドライブ・マイ・カー』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『サマーフィルムにのって』の邦画3本だ…

2021年8月の3点

『ザ・スーサイド・スクワッド』 リブートとしての成功例。DC映画は良くも悪くも本当に何を繰り出すのが全然読めない。 ★評論 Morris, Borgan. "Is The Suicide Squad the beginning of the end for the superhero movie?" (The Guardian) www.theguardian.c…

2021年7月の3点

どうやらパンデミック下の日本の首都にて、世界中からアスリートが終結する4年に1度の大イベントが今なお強行されており、その存在を思い出す度に不愉快な気持ちにさせられる*1のだが、とりあえず7月見た作品から3点選んだ。 ☆『プロミシング・ヤング・ウー…

『ブラック・ウィドウ』における楽曲「アメリカン・パイ」の意味

『ブラック・ウィドウ』を見ていて、驚いたと同時に強い感銘を受けたのは以下の曲が回想シーンで使われていたからだ。 www.youtube.com 『アメリカン・パイ』は1971年にアメリカのシンガー・ソングライター、ドン・マクリーンによるヒット曲である。フルバー…

エリザベス・モスの世界へようこそ 映画三選 k

今やドラマでも映画でも大活躍中のエリザベス・モスの出演作よりとりわけおすすめしたい3本を選んでみました。 『ザ・ワン・アイ・ラブ(The One I Love) 』(2013)(あえて訳すと『私の愛する人』) 関係が悪化中の夫婦がセラピーとして向かった先にいたのは…

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』 はすでに「成功」だと言える理由

日本では、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』(以下"Birds of Prey")の公開を3月まで待たないといけない。しかし、鑑賞前からすでにこの作品は「成功」を収めていると言える。 その理由は3つ。一つは、予告編が素晴らしいから。『スーサイド…

アカデミー作品賞受賞作『グリーン・ブック』前情報(そんなに「いいハナシ」なのか?)

海外のポッドキャストを普段からよく聞いているのだが、中でも毎週更新が待ち遠しい番組が"Still Processing"で、性的マイノリティ&黒人という二重の意味で少数派の男女二人(Jenna Worsham & Wesley Morris)が、アメリカのポップカルチャーが今日の社会にど…

ディザスター・アーティスト 映画の中と外

The Disaster Artist Teaser Trailer #1 | Movieclips Trailer 映画の中 アメリカコメディ界の巨匠、ジャド・アパトーが世に問うた『40歳の童貞男』を「ブロマンス映画」(男友達の友情映画)元年とするならば、はや15年近くが経過したことになる。今なお同…

2018年の映画総括 下半期 (ブリグズビー、ボルグ/マッケンロー、サーチ、1987など)

下半期の映画について。 前回の投稿に続き、まず2018年の映画ではない話からになってしまう。去年公開の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、「賛否両論」という表現が付きまとう映画だった、と個人的には記憶している。その「否」の意見が、建設的な批…

2018年の映画総括 上半期 (ブラックパンサー、シェイプ・オブ・ウォーター、ペンタゴン、アイ、トーニャなど)

今年も残りわずか。とりあえず今年の前半を振り返ってみたい。 と言いつつも、厳密には2017年12月に封切となった松岡茉優初出演作『勝手にふるえてろ』についてまず言及したい。(この映画、年は跨いでいるので一応2018年の映画ということで話を進める) 本編…

Searchingの先駆け的Modern Family傑作回

全てがPC画面内で展開するスリラー映画Searchingが話題のようだが(もちろん、というか順当に未見)、このニュースを知ったとき、どこか既視感があった。 それもそのはず、Modern FamilyというアメリカABCテレビのシットコムが一回全く同じようなことをやっ…

『シング・ストリート』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

遅ればせながら『シング・ストリート』(アイルランド、2016年)を観ました。音楽と人間関係における喜びにあふれた映画で、観ていて楽しかったです。 このブログはアメリカ映画を主に扱うブログなので、一応アメリカ映画と絡ませて話を広げたいと思うのです…

『カメラを止めるな!』を語ることとは (ネタバレなし)

よくゾンビ映画は人種、経済格差など、社会問題を映し出す鏡として語られることがある。その論理でいくとゾンビ映画を語ることは、現在の社会を語ることになる。 同様に、『カメラを止めるな!』を語ることは、映画そのもののあり方を語ることになる。映画に…

バック・トゥ・ザ・フューチャーの「たられば」を考える

BSプレミアムで今日21:00-23:00の時間帯で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の再放送をやっていたので、何回目かもう覚えてはいないが、つい最後まで見てしまった。 SFアドベンチャーとして紹介されていた映画(しかもスティーブン・スピルバーグ製作総指…

ポッドキャストEpisode02 ジム・キャリー映画の神髄とは?

ポッドキャストの第二回、更新しました。 今回は、『Mr.ダマ―』の続編が今月公開されるということで、ジム・キャリーの諸作品について論じました。 Episode 02 ジム・キャリー映画の神髄とは? by アメリカンに映画を観る!! | Free Listening on SoundClou…

ポッドキャスト予告 第二弾 ジム・キャリー特集

今月のポッドキャストは、『Mr.ダマ―』の続編が今月公開されることを記念して、ジム・キャリーの特集をします。 Dumb and Dumber To - Official Trailer Premiere ... 30年以上のキャリアを誇る名コメディアンジム・キャリーの傑作映画を振り返りながら、…

ウディ・アレンの『カメレオンマン』から見るドキュメンタリーの神話

『カメレオンマン』はウディ・アレンによるモキュメンタリ―で、ゼリグという、あるトラウマ的経験をきっかけに、カメレオンのごとく周りに合わせて変態する人間になってしまい、アメリカ社会でセンセーションになってしまう男を描いたコメディ作品です。 ド…

アントマン レビュー

”アントマン”を観てきた。 Marvel Cinematic Universeの第二弾がこれで終わりらしい。(ちなみに第一弾はアイアンマンから始まり、アベンジャーズまで)期待通りの良作で、まさに宇宙のごとく拡張することを止めないマーベルの作品群が量産されることにうんざ…

『インサイド・ヘッド』Inside Headを観て(レビュー)

遅ればせながら、ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド』を字幕版にて鑑賞。この夏休みの新作ラッシュによって、吹き替え版ならまだしも、字幕版がほとんど上映されていないことに気づいて、急いで観て来た。 マッド・マックス試論(解説・分析) - アメリ…

バグダッド・カフェに「メリー・ポピンズ」

今回の考察対象の『バグダッド・カフェ』は1987年の西ドイツ映画で、当時のアメリカでもヒットした、日本でいうミニ・シアター系の映画だ。完全版でも100分強というコンパクトな尺で、泣き笑いしながら観る事の出来る映画になっていると言える。 (以…

ピッチ・パーフェクト バカコメディ好きにこそ薦めたい 愛すべきおバカ映画その8

Pitch Perfect (2012)を観てきた。 2作目が今アメリカでヒット中と言うことで、ようやく日本でも第一作が観られるようになった。 内向的な主人公が、大学の女性アカペラ部に入って奮闘する話・・・早い話、映画版『Glee』と考えてもらえれば分かりやすいと…

バードマン ネタバレ徹底解説 後編

(結末部分に関わっています) この映画は、レイモンド・カーヴァーの引用から始まり、カーヴァーの短編の上演が物語の中核となっている。結論から言えば、作中でリーガン本人が言うように、これは彼の人生のダイジェスト版のようなものである。 『愛につい…