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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

『名もなき者』と併せて見たい(偽)音楽伝記映画

先日ジェームズ・マンゴールド監督、ティモシー・シャラメ主演『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』を見た。言わずと知れたミュージシャンボブ・ディランが、文字通り名もなき者から大スターとなるキャリアの最初の5年間を描いた映画である。アメコミ映画『LO…

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』と『キャット・パーソン』:ハリソン・フォード像の表象について

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』を見てきた。レッド・ハルクを予告編だけでなく、ポスターでも大々的に宣伝してしまうのは若干ネタバレ気味ではないかとか、アメリカの艦隊にミサイルまで発射するやたらアグレッシブな日本の描写はど…

2025年1月の3点(『ビーキーパー』『嗤う蟲』『トワイライト・ウォリアーズ』)

『ビーキーパー』デヴィッド・エアー監督、アメリカ・イギリス合作 とりあえず新年早々にこういう映画を見るのは縁起が良い?ということで↓の投稿に書いた。 ykondo57.hatenablog.com 『嗤う蟲』城定秀夫監督、日本 田舎でのスローライフを求めて移住してき…

『リアル・ペイン』おかしな二人と石

『リアル・ペイン~心の旅』は、『ソーシャル・ネットワーク』でマーク・ザッカーバーグを演じ、『ゾンビランド』でゾンビだらけの日常を生き抜く主人公を演じたことでもお馴染みのジェシー・アイゼンバーグの長編第二作である。アイゼンバーグ演じるデヴィ…

『ナイトビッチ』獣になった主人公、そしてあのラストの解釈

マリエル・ヘラー監督、エイミー・アダムズ主演の『ナイトビッチ』を見た。アメリカで劇場公開されたので、日本もあわよくば、と思っていたのが残念ながら配信スルーとなってしまった作品で、ジャンルとしてはホラー要素も若干入ったコメディドラマ(いわゆる…

『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』トランプをめぐる師弟もの

一文にまとめてしまえば、師匠を足蹴にする冷徹な一人の(つまらない)ビジネスパーソンが生まれるまでの話である。もちろん、自分がこの映画を見ることにした一因には「題材が今の大統領だから」ということはある。しかしながら、劇映画から史実について何…

在宅鑑賞日記⑧ テレビで映画を部分的に見ることについて

某日 『マッドマックス』(1979年)がテレビでやっていた。お恥ずかしい話ながら、シリーズ一作目の本作を実は最後まで見たことがなかったので、これを機会として後追いで通して全編を見たのだが、この決してスカッとしない復讐が『フュリオサ』に引き継がれて…

『ビーキーパー』荒唐無稽でも面白い映画は世の中にたくさんある

つくづく思うのだが、アクション映画について語る的確な言葉を探すのに苦労する。苦労して結局見つからないことがほとんどだ。大抵の場合、脚本のすばらしさゆえにそのアクション映画について語りたくなるわけではないので、結局アクションシーンをうまく表…

2024年の10本

2024年は旧作を含めた84本の映画を劇場で鑑賞することができた。その中から選んだ10本を鑑賞順に列挙したのが以上のものである。 (A) 三宅唱『夜明けのすべて』(日本) (B) ソ・ウニョン『同感 時が交差する初恋』(韓国) (C) ジョージ・ミラー『マッドマ…

今回はおおむねシリアスなジュスティーン・トリエ『落下の解剖学』

ジュスティーン・トリエ監督の『落下の解剖学』はカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した作品で、トリエ監督の長編作品としては4作目に当たる。物語としては、フレンチアルプスの山荘に息子と暮らす主人公サンドラの夫が謎の落下死を遂げる。やがて事故死の可…

大事なところでかかるのはニーナ・シモン『Perfect Days』『ボーはおそれている』

遅ればせながらヴィム・ヴェンダーズ監督の『Perfect Days』を見た。その前は、アリ・アスター監督の『ボーはおそれている』を見ていたので、期せずしてニーナ・シモンの曲が肝心なところに二本連続でかかっていたので少し驚いた。 (以下、両作のネタバレあ…

まさかの"Somebody That I Used to Know" 『ザ・ガーディアン/守護者』 

思いがけない形で、とても懐かしい曲を映画館で聞くことになった。 "Somebody That I Used to Know"である。2011年の曲なので、10年以上も前のヒットだということで驚いた。『ザ・ガーディアン/守護者』という韓国映画でこの曲がいわばライトモチーフとして…

今年のフランケンシュタイン系映画はまだあるはず『哀れなるものたち』『Lisa Frankenstein』

ヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーン主演の『哀れなるものたち』(Poor Things)を見た。この監督主演タッグは短編も入れると三度目の共演らしい。自分もいいコンビだとは思う。『籠の中の乙女』『ロブスター』『聖なる鹿殺し』は後追いで、『女王陛下…

2023年の映画ベスト10

2023年のベスト10は、 ①バービー ②パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女 ③別れる決心 ④フェイブルマンズ ⑤ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい ⑥ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー ⑦SHE SAID/シー・セッド その名を暴け ⑧Blue Giant ⑨スパイダーマン:アク…

2023年10月の3点

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(マーティン・スコセッシ監督、アメリカ) 20世紀の白人による先住民の簒奪に迫る題材、200分を超える長尺、Apple配信映画としては珍しい劇場公開といった要素が揃う映画もなかなかないだろうし、本編自体に引き込ま…

『フェイブルマンズ』気付くのはいつも後:主人公が撮った劇映画と記録映画(映画についての映画③)

スティーブン・スピルバーグによる『フェイブルマンズ』は、スピルバーグ少年が映画に目覚め、監督を目指すようになるまでの実体験を基に作られた映画である。スピルバーグの姓が本作ではフェイブルマン(Fabelman)、つまりお話、物語(fable)を想起させるもの…

ザ・クリエイター/創造者 ベトナム戦争ものをSFで

『ザ・クリエイター/創造者』は近未来を舞台とし、AIを敵視する西側諸国(主にアメリカ)と、AIとの共存を標榜するニューアジアとの戦争が続く中、元特殊部隊のジョシュアが本来は暗殺対象であるAI少女を守るべく奮闘するSFアクションである。 本作がベトナ…

皮肉たっぷりに描かれるヒットマンの生活『ザ・キラー』

デイビッド・フィンチャー監督の『ザ・キラー』をネットフリックス配信前に劇場で見た。マイケル・ファスベンダー演じる殺し屋がパリでの仕事に失敗したために自分の隠れ家にいたパートナーが襲われてしまう。そのカタをつけるべく彼は世界中を飛び回って問…

在宅鑑賞日記⑦ ベイビーわるきゅーれ再訪

ykondo57.hatenablog.com 某日 『コンセクエンス』のことを思い出しつつ、ネットフリックスで『ベイビーわるきゅーれ』が見られるようになったので、全編を再見した。ジョン・ウィックシリーズでは全く描かれない、ゼニ(のなさ)をちゃんと描いていることを…

2023年9月の3点 (『JW4』『グランツーリスモ』『ミュータント・タートルズ』)

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』チャド・スタエルスキ監督、アメリカ とにかくナイスガイのキアヌ・リーブス演じる、(やむを得ず)とにかく周りに迷惑ばかりかけてしまうジョン・ウィック。その落とし前を彼なりの形でどうつけるのか、と考えるとある…

死神ウィックの最終章『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を見た。前作は「パラベラム」、本作は「コンセクエンス」。シリーズ4作目となるこの映画の原題は"John Wick: Chapter 4"なので、"John Wick" "John Wick: Chapter 2" "John Wick: Parabellum" "John Wick: Chapter 4"…

『グランツーリスモ』と『アライブフーン』:リアルとバーチャルな場で走り続けること

『グランツーリスモ』を観た。ちなみに、私はプレイステーションのゲーム「グランツーリスモ」をプレイしたことがない。この映画は、主人公がレーシング・ゲーム(厳密には"シミュレーター"らしいが)の敏腕プレイヤーから現実のレーサーになるという嘘みた…

2023年8月の3点(『バービー』『あしたの少女』『ソウルに帰る』)

『バービー』グレタ・ガーウィグ監督、アメリカ 真っ直ぐに語られるフェミニズム的メッセージ、往年の名作へのオマージュやパロディ、そして何よりも観客を笑わせてくれる要素を持つ娯楽大作にして、長編は3本目のグレタ・ガーウィグが世に問うた現時点での…

機械仕掛けの「運命」:アルゴリズム対スパイダーマン(たち)

ykondo57.hatenablog.com (↑の続き)その二作品とは、スーパーヒーロー映画『ザ・フラッシュ』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のことである。前者ではフラッシュが新たに発見した自分の能力を使って過去に戻って母親の死を食い止めた…

"How to Blow Up a Pipeline" エコ・スリラーの新境地

How to Blow Up a Pipelineという映画を先日見た。日本では劇場未公開で、配信予定も未定の映画なのだが、大変面白かった。本作では、気候変動による未曾有の危機にも関わらず石油業界は利益を優先して何もしない中、テキサス州にある石油輸送パイプラインを…

在宅鑑賞日記 ⑥ 配信スルー映画を見て考えるジャンル論

某日 いつの間にか配信スルーになっていた『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』(2023年)を見た。嵐の夜に20代の若者たちが"Bodies Bodies Bodies"(bodyは死体の意)というゲームを行っていたら、本当に死人が出てしまう、という映…

2023年7月の3点(『裸足になって』『M:I デッドレコニング Part One』「一流シェフのファミリーレストラン(The Bear)」S2)

『裸足になって』(ムニア・メドゥール監督・フランス、アルジェリア) 90分強で本編がスパッと終わったときの満足感が忘れられなかった。 『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(クリストファー・マッカリー監督、アメリカ) 『キー…

2023年6月の3本『アクロス・ザ・スパイダーバース』『ザ・フラッシュ』『ウーマン・トーキング』

『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』(ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン監督、アメリカ) www.youtube.com 冒頭のグウェンパートだけの映画も見てみたい。 『ザ・フラッシュ』(アンディ・ムスキエ…

画面の停滞から回避する会話劇『ウーマン・トーキング』

『ウーマン・トーキング』は、サラ・ポーリーの4本目の長編映画である(内ドキュメンタリーが一本)。俳優としてそのキャリアを始めたポーリー監督は、寡作だと言え、前作の劇映画『テイク・ディス・ワルツ』(傑作!)からすれば実に10年近く間隔が空いた。…

『バービー』予告編について 郊外映画なのか?

www.youtube.com 当初、グレタ・ガーウィグがバービー人形の映画を撮ると聞いて、驚いていたのだが、今回『アクロス・ザ・スパイダーバース』や『ザ・フラッシュ』(2本については後日記事を書きます)の鑑賞前に見た『バービー』の予告編を見る限り、これは…