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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

2021年5月の3点

・『ファーザー』
 「感動作」かどうかは実際に見てみて決めてもらえればいいと思う。個人的にはそういうことではあまりないと思ったのだが。一見地味そうなイギリスのヒューマンドラマだが、作品の中身自体はなかなかショッキングで、描き方によっては煽情的な問題作になりかねない類の映画である。別の表現をすれば、本作は心理スリラーないしホラーである。
 『羊たちの沈黙』でアカデミー主演賞を受賞したアンソニー・ホプキンスが本作で再び同賞に輝いた訳だが、『羊たちの沈黙』と『ファーザー』はあながちそこまで異なる作品だと言えない気もする。さらに、脚色を監督と共同で手掛けたのは『危険な関係』の脚本家であることも一応指摘しておく。「もしもハンニバル・レクター認知症になったら?」という仮定の下作られた映画として見ても成立しうるのではないかとすら思った。

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・『クルエラ』

 ディズニー映画だからここまでのレベルに達することが出来たのだろうが、ディズニー映画でなければならなかった、という点はたしかに残念だった。これが『101匹わんちゃん』と直接は関係のないどこかのインディペンデント映画だったらもっと楽しめた気はする。いずれにせよ、現時点では2021年のベスト5に入る。それにしても、なぜローリング・ストーンズの楽曲はあれほど映画の挿入曲として使いやすいんだろうか。
 全体として本作は必要とされているクオリティを優に超えているが、この映画はディズニー映画であるという事実が妨げになっている。アニメ及び実写版の『101匹わんちゃん』に続くような形を取らなければいけない上に、主人公を純粋なアンチ・ヒーローにすることは許されていないからだ」(拙訳)という映画評論家Karen Hanの指摘がとてもしっくりときた。

slate.com

Cruella' Review: A Disney Villain Gets a Backstory. It's Spotty. - The New  York Times

 

・『アメリカン・ユートピア
 今年の暫定1位。コンサートを記録映画として黙ってじっとして見てしまうことほど辛いことはないし、あまりフィクションとドキュメンタリーとを同じ次元で比べるのも適切だとは思わない(もちろん両者の境界は常に曖昧たりえる、という点を十分に踏まえた上でのことだが)。しかし、この作品にみなぎる音楽の力を映画として軽視することは決してできないし、スパイク・リー独自の演出もかなり印象的だった。


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