[PR]カウンター

アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

2021年7月の3点

どうやらパンデミック下の日本の首都にて、世界中からアスリートが終結する4年に1度の大イベントが今なお強行されており、その存在を思い出す度に不愉快な気持ちにさせられる*1のだが、とりあえず7月見た作品から3点選んだ。

 

☆『プロミシング・ヤング・ウーマン』

"Promising Young Woman" uses religious imagery to portray Cassie (Carey Mulligan) as an avenging angel.

 映画は時として現実逃避的な行為になりえるかもしれないが、中には、観客が抱く甘ったるい願望を叶えてあげるための装置ではないことを思い出させてくれるような作品もある。主演キャリー・マリガンによる名演と、監督・脚本エメラルド・フェネルの特徴的な演出が光る。フェネルがショーランナーを務めた『キリング・イブ』シーズン2を見ておくとなお良いかもしれない。 
 作中における警察の描写に対しての批判が例えば↓の評論でもあったが、たしかにそれは妥当な指摘だと思った。その一方で、あの描き方はひょっとして監督がイギリス人であることにも結構関係があるのでは、とも思っている。

★関連記事 NY Timesのポッドキャスト Still Processing "No Country for Any Men" (Wesley Morris & Jenna Wortham)

☆『17歳の瞳に映る世界』

 原題はNever Rarely Sometimes Always。この意味は本編を見ると明らかになる。そういえばキャリー・マリガン主演作のAn Educationも不当なことに『17歳の肖像』になっていた。「瞳」だとか「肖像」だとか、なぜか顔に関する視覚表現の意味合いがなぜか邦題で付与されがちだが、本作の場合、↓の評論にあるように、鑑賞時は手と手の触れ合い、触覚のモチーフに注目するのも一つの見方だと思う。

★関連記事 メトロポリターナトーキョー2021年7月号「孤独な少女と、彼女の手をそっと握る女たちの物語《映画でぶらぶら》」(月永理絵)

metropolitana.tokyo

 

☆『フィアーストリート』3部作

f:id:ykondo57:20210801141828p:plain

 3本まとめて、しかもネットフリックス配信映画になってしまうが、「満足の行く形で3部作が完結している」という事実に圧倒されてしまったので選出した。なかなか3部作を終わらせるのは難しい中で、本作は3本まとめて撮ってしまうことで、劇場映画と配信オンリーのミニ・シリーズとの中間にあるような「完成度の大変高い3部構成のスラッシャーもの」となっている。1990年代の「メタ・ホラー」、1970年代の「黎明期スラッシャー」、そして19世紀における魔女狩りという「歴史的なホラー」という3つの設定を自由に移動し、徐々に謎を解き明かしていきつつ、「主人公たち vs. 町の抱える最大の闇」という最終決戦へと持ち込む見事な展開に自分がホラーを見ているということを忘れて感動してしまった。

★副読 YouTube動画 "Why Is It So Hard To End A Trilogy" (Patrick H Willem) 

www.youtube.com

 

 

*1:こういった不満に対して「こんな現状だからこそスポーツの力で感動を届けたい!」とかいう主張が何度もしぶとく浮上してくるのだが、「このイベントがあったからこそ、この悲惨で無慈悲な現状がある」ということを繰り返し主張しておきたい