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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

『ビーキーパー』荒唐無稽でも面白い映画は世の中にたくさんある

 つくづく思うのだが、アクション映画について語る的確な言葉を探すのに苦労する。苦労して結局見つからないことがほとんどだ。大抵の場合、脚本のすばらしさゆえにそのアクション映画について語りたくなるわけではないので、結局アクションシーンをうまく表現できなければ本当に言いたいことは何も残らない。

 デヴィッド・エアー監督、ジェイソン・ステイサム主演『ビーキーパー』もそんな感じの映画だった。アクションをしっかりと見せるもだらだらとは描かない簡潔でタイトな語り口、次々に登場する(が本当にどこから出てきたのか見当もつかない)エキセントリックな殺し屋や傭兵たち、そして全ての展開が本当に早く(拙速と言われても無理のないくらい)、あれだけ戦っておいて100分少しで映画は終了。アクション関連のことについて語るとすればこれくらいで手一杯である。

 それ以外でこちらで拾える限りのことを言葉にしていくと、主人公は養蜂家として平穏な暮らしを送っていたはずだが実のところものすごい奴だったことがやがて判明する。彼は復讐のためひたすら詐欺集団のボスを探して回る。向こうも商売をどんどん潰されていくのはたまらないので刺客を送って何とか事態を収めたい。しかし、ステイサムを止めることは誰もできない。そんな中、FBIの二人組も徐々に真相に迫るようになり、最後は三つ巴のような図式が出来上がる。「のような図式」と書いているのは、別段FBIが入ってきて物語にとりわけ素晴らしい化学反応が生まれているわけではないからだ。ただし、このFBIのバディの感じに、エアー監督の『トレーニング・デイ』を彷彿とさせるところが若干あって面白かった。あとは、詐欺集団の中間管理職の連中が、本当に小物なジョーダン・ベルフォート(『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でディカプリオが演じた主人公)みたいで、あの悪党どものしょうもなさにも笑えた。NFTだとか暗号通貨の詐欺性が深刻な問題と化している中、笑ってばかりもいられないのだが、2020年代の娯楽アクションはこういった人々がサンドバッグとなる世の中になったのである。

 次も同監督主演コンビのアクション映画が控えているらしい。『スーサイド・スクワッド』というDCの大作映画を鑑賞した際、本当に一体何を見ていたのかよく分からなかった一観客としては喜ばしい限りのことである。