当初、グレタ・ガーウィグがバービー人形の映画を撮ると聞いて、驚いていたのだが、今回『アクロス・ザ・スパイダーバース』や『ザ・フラッシュ』(2本については後日記事を書きます)の鑑賞前に見た『バービー』の予告編を見る限り、これはアメリカの郊外(サバービア)を描いた映画の変形なのか?とふと思った。
予告編では、人形の世界から人間の世界に足を踏み入れるバービーとケンの姿が確認できるが、それは郊外の醜い裏側を暴く一連の映像作品を想起させる。『カラー・オブ・ハート』でもいいし、最近だと『ワンダヴィジョン』でも『ドント・ウォーリー・ダーリング』でもいいが、中間層の白人たちにとっての安住の地である郊外は、他者の犠牲の上に成り立っていたり、住人たちも抑圧的な構造下に置かれていたりする。
もちろん、バービーやケン"たち"は極めて多種多様な人形であって、そこに人種的な画一化は回避されている。しかしながら、楽園のように思えた場が少しずつ変容していく様が描かれるのであれば、この映画も、郊外とその外の世界という対比構造を借用して、バービーの世界を描こうとしているように思えた。いずれにせよ、『バビロン』よりは当たって欲しいと切に願うばかりだ。