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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

2021年4月の3点

・『21ブリッジ』 チャドウィック・ボーズマンの劇場公開作としては最後の作品。全てがタイトかつスピーディーに展開する99分。本作を理解するためのヒントは中盤に登場する「パララックス・ホテル」。 bunshun.jp ・A Question of Silence Antonia's Lines…

『ミナリ』アジアン・アメリカン・ドリーム

『ミナリ』は、基本的に少年デビッド(写真左から2番目)から見た「暴走父ちゃん」の物語である一方で、クロースアップが父ジェイコブよりも母モニカの方に多かったように思えた。それが正しいのであれば、映画が寄り添おうとしてるのはむしろモニカの方だと…

郊外で私は喪に服す ー『ワンダヴィジョン』という「アノマリー」についての覚書 (後)

" data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> 本稿のタイトルで私は『ワンダヴィジョン』を「アノマリー」と表現している。「アノマリー」には「変則的なこと」「逸脱性」などの意味がある。マーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)にお…

郊外で私は喪に服す ー『ワンダヴィジョン』という「アノマリー」についての覚書 (前)

" data-en-clipboard="true"> マーベルの新作ミニ・シリーズが、『ワンダヴィジョン』という、郊外に住む中流階級の白人カップルのドタバタ劇、つまり往年のシット・コム(ファミリー・ドラマ)になるという知らせが飛び込んできたときには、驚いたと同時に…

パンデミック・ムービー Case 1 - 『マルコム&マリー』

去年からコロナ禍により通常の映画製作が出来なくなった中、それでもわずかながら新作映画は生まれており、我々の自宅の画面に届いている。1918年のインフルエンザ大流行の後、大衆文化がその深すぎるはずの爪痕を見せずにいたことは、今回のパンデミックに…

2021年2月の3点

・WandaVision 第1話~第8話 (Disney+) 現時点で結末を知る由はないが、久しぶりのマーベル新作に相当満足してしまっている自分がいることに気づく。『エンドゲーム』を見終えた後に「もうマーベル映画は見なくていいな」と思っていたのだが、期せずして発生…

『すばらしき世界』

西川美和監督作品は、『永い言い訳』をアマゾンプライムで見て、「おお、何かすごい映画見たな・・・」と思ったのが初めてで、『蛇イチゴ』や『ゆれる』は後から見て圧倒されました。新作『すばらしき世界』が劇場で初めて鑑賞した同監督作品でした。 『蛇イ…

未公開映画3本ウォッチ (Queen & Slim, Judas and the Black Messiah, The United States vs. Billie Holiday)

アメリカの2月はBlack History Month(黒人歴史月間)とされており、各種ストリーミングのプラットフォームでも、本数はあまり多くないなりに、関連映画を紹介していることがある。そこで日本では未公開作品を3本挙げてみる。更新は随時します。 Queen & Slim …

『ワンダヴィジョン』第5話まで 重要ツイート、記事抜き書き

【『ワンダヴィジョン』の第5話までのネタバレがあります】 2020年は劇場からマーベル映画が消え去った年でもあった。未だに延期された作品が戻ってくるのが分からないまま、Disney+のミニシリーズ『ワンダヴィジョン』が先月より配信開始している。こちら…

今すぐ観られる2021年のアカデミー国際長編映画賞出品作

2021年のアカデミー国際長編映画賞に出品され承認されたのは93本でした。ショートリスト(ノミネートの前段階)は例年の10本から15本になり、そのリストが発表されるのは2/9だそうです。 その中でも何本かは既に日本で見られるようですので、以下に私が確認…

ジャズ・ミュージシャン、ロバート・グラスパー から見た 『ラ・ラ・ランド』 

www.youtube.com 面白いyoutubeの動画を見たので、『ラ・ラ・ランド』(2016年) に関する一部(12:21~13:22)を英訳してみました。ジャズ・ミュージシャンのロバート・グラスパーが映画におけるジャズ描写に関してコメントする、という内容の動画です。 (ロバー…

『KCIA 南山の部長たち』

『KCIA 南山の部長たち』を昨日観た。まだ起こってから半世紀も経っていない大統領の暗殺を、迫力のある実録サスペンスとして映画化したものである。本作は去年の韓国では興行収入1位だったらしい。しかも、今年度のアカデミー賞国際長編賞に韓国が出品した…

"The White Tiger"『ホワイト・タイガー』(印・米、2021年)

“I was trapped in a rooster coop, and don't believe for a second there's a million-rupee game show you can win to get out of it”「檻から出るため、クイズ番組で大金を勝ち取ろうなど思いもよりません」という台詞がはっきりと示す通り、『スラムド…

ヒッチコック&バーグマン 『汚名』『白い恐怖』

『汚名』(Notorious, 1946)(原題は「悪名高い」の意) ナチ・スパイ 対 ドイツからの亡命者(イングリット・バーグマン) & CIA (ケーリー・グラント)。個人的に、ケーリー・グラントに、スターとしてのオーラがものすごくあるの分かるのだが、『フィルデルフィ…

The Assistant (2019) 闇の通過儀礼:かくしてワインスタインの「共犯者」が生まれる

とある映画会社の新入り秘書の1日を描いたキティ・グリーン監督による傑作スリラー。もちろん背景にあるのはハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行及び#MeToo運動であり、その一連の報道を把握していることが大前提となっている。 とにかく恐ろしい映画であ…

新年のごあいさつにかえて

www.youtube.com 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。 このブログは映画10本観るごとに1本は記事を書くペースで今年やっていければなと思っています。上の動画を新年のごあいさつの代わりとさせてもらいます。かの傑作『グリーン・ルーム』か…

2020年のベスト10

①パラサイト ②ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey ③燃ゆる女の肖像 ④マルモイ ことばあつめ ⑤ハスラーズ ⑥幸せへのまわり道 ⑦ブックスマート ⑧シカゴ7裁判 ⑨エクストリーム・ジョブ ⑩はちどり 『パラサイト』はもはや「殿堂入り」だ。今年観た中…

2020年10月の3点

今月は見たい新作映画がたくさんあって、嬉しい限りだった。その中から2本と、旧作映画1本を選んだ。 ・『シカゴ7裁判』(Netflix) これは映画館で見なければならない、という勝手な使命感を持って、実際に劇場で見ることが出来た。アーロン・ソーキン印の法…

さよならのそのあとのそのあと: 『フェアウェル』後日談

" data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> (『フェアウェル』の結末部分に触れています) " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"…

2020年9月後半の3点

映画:『テネット TENET』("TENET" (2020); クリストファー・ノーラン監督) 今年ベストだとは言わないが、とにかく一度見ておくべき作品だし、2020年の映画を語る上で欠かせない一本。 ykondo57.hatenablog.com 映画:『鵞鳥湖の夜』("The Wild Goose Lake,"…

『シカゴ7裁判』上映は10/9㈮から!

既にオスカー候補有力と言われているNetflix映画『シカゴ7裁判』がありがたいことに映画館で上映される。言わずと知れたアーロン・ソーキンの脚本・監督作をNetflixで見るのは少し寂しいことだと思っていたので朗報だ。 上映館は以下(↓)のリンクで確認できる…

テネットの理解を諦めた人へ 

クリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』は、恐らく2020年下半期唯一の超大作映画となりそうだが、それ以上に本筋を理解できない映画だったと思う。 [SPOILERS] Tenet Timelines Diagram with Relative Time vs Relative Age : tenet 上記のタ…

2020年8月の2点

2021年公開予定の『バットマン』 リブート『スーサイド・スクワッド』の予告映像 THE BATMAN Trailer | NEW (2021) Robert Pattinson, DC FanDome The Suicide Squad - Sneak Peek Trailer (2021) 前情報だと『バットマン』はヒッチコック的なサスペンス要素…

9月前半の3点

9月はまだ半分終わったところだが、ひとまず3点ほど気になった作品を挙げてみる。 映画:『もう終わりにしよう』("I'm Thinking on Ending Things"(2020); チャーリー・カウフマン監督) なぜジェシー・バックリー演じる主人公の服装、職業、そして名前すら…

透明人間のオリジン・ストーリー 『透明人間』

(結末部分に触れています) リー・ワネル監督の前作『アップグレード』の要素もかなり継承した、傑作スリラーである。透明人間のことは別に掘り下げる必要はなく、断片的な情報だけがこちらには与えられ、むしろそのモンスターへの恐怖が増すばかり。何もな…

ニア・ダコスタ監督の名を覚えておく理由

今年の9月に『キャンディマン』がアメリカで公開予定だ。 この映画は、ジョーダン・ピールが『ゲット・アウト』の影響元の一つとして度々挙げている1992年のホラー映画『キャンディマン』の続編だということだ。 そしてこの監督はニア・ダコスタという若手黒…

2020年8月の戦争本・戦争映画

新刊からは『避けられた戦争』(ちくま新書、2020年) を通読。1920年代から日中戦争までの日本の行動を分析している。著者の専門は日米関係史であるからか、第3章「米国の日米移民排斥と反米感情の噴出」の内容がとりわけ印象に残った。タイトルの内容説明と…

エリザベス・モスの世界へようこそ 映画三選 k

今やドラマでも映画でも大活躍中のエリザベス・モスの出演作よりとりわけおすすめしたい3本を選んでみました。 『ザ・ワン・アイ・ラブ(The One I Love) 』(2013)(あえて訳すと『私の愛する人』) 関係が悪化中の夫婦がセラピーとして向かった先にいたのは…

「ずっと家でも書けへん」!という書かれた悩み

どうやら作家による「コロナ禍日記」が世界的にも一種のパターンになっているようだ。色々読んでいて、当初は自虐的というか、自分を責めるような文章が結構多くて、状況の深刻さを物語っていたが、今はもう少し客観的に自分の生活を見つめなおし、そこにあ…

ジュディの助手から、ジュディ以上の存在へ:『ワイルド・ローズ』

今年はとても音楽映画が豊作だ。『ティーン・スピリット』、『ジュディ』、『ポップスター』、『カセットテープ・ダイアリーズ』、そして本作『ワイルド・ローズ』。主人公(ジェシー・バックリー)は、刑務所帰りのシングルマザーとして、二人の子供を育て…