[PR]カウンター

アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

『明日に処刑を...』スコセッシの隠れた佳作

 『明日に処刑を...』はマーティン・スコセッシの長編第二作であり、ロジャー・コーマン製作の映画というだけあって、他のスコセッシ映画とは随分毛色の異なる映画のように思える。大恐慌アメリカ南部州カンザスを舞台とする犯罪映画だが、今回の主人公はバーサ・トンプソンという放浪者の女性である。のちに犯罪者として追われる身となるが、他の男たちと共に、自分たちのような庶民を搾取し続ける鉄道業の資本家に復讐を果たそうとする物語である。

 スコセッシの一連の監督作を考える上で興味深い点は2つある。1つは、彼の作品には珍しく女性が主人公であり、最後まで生き残っていることだ。もう1つは、黒人男性の登場人物が白人たちを倒して、彼も最後まで生き残っていることだ。白人女性も黒人男性も、他の作品ではやはり脇役だし、例えば『グッドフェローズ』のサミュエル・L・ジャクソンのことを思い出す。スコセッシの作家性があまり前面に出ているように見えない作品だし、彼の作品群を語る上であまり顧みられることがない作品だとは思うが、なかなか興味深い作品ではあると思う。というのも、やはりこの後に作られる『ミーン・ストリート』や『タクシードライバー』を自分が考える上で、このジェンダー的あるいは人種的観点は欠かせない要素になってくるからだ。