[PR]カウンター

アメリカンに映画を観る!

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

アカデミー作品賞受賞作『グリーン・ブック』前情報(そんなに「いいハナシ」なのか?)

 海外のポッドキャストを普段からよく聞いているのだが、中でも毎週更新が待ち遠しい番組が"Still Processing"で、性的マイノリティ&黒人という二重の意味で少数派の男女二人(Jenna Worsham & Wesley Morris)が、アメリカのポップカルチャーが今日の社会にどういう意味を持つのか、丁寧にかつ快活に説くものだ。かなりシャープな議論を展開する二人の話は本国アメリカの議論自体の何歩も先に行っている感すらある。そこで何度か引き合いに出てくるのが今年のアカデミー賞候補『グリーンブック』だ(どうも作品賞は『Roma』かこれが有力候補らしい)。

 

Rotten Tomatoesでも80%、imdbでも8.3/10と、観客、批評家双方の評価は高い。しかし、異人種間の「友情」を描く本作に対する二人の評価はかなり手厳しい。正直なところ、二人は結構憤っている。

https://www.nytimes.com/2019/02/21/podcasts/still-processing-fantasies-spike-lee-do-the-right-thing.html

 そのあたりをより細かく分析しているのが、Wesley MorrisによるNYTの記事。

Why Do the Oscars Keep Falling for Racial Reconciliation Fantasies? - The New York Times

(荒く訳してみると、「なぜアカデミー賞は、人種和解というファンタジーに騙され続けるのか?」)

 たしかに、『ドライビング・ミス・デイジー』のような、終始雇い主に従順な黒人と、最後は少しばかりの優しさを見せる偏屈者の白人という構図を『グリーン・ブック』は反転させている。しかしながら、結局人種差別的考え方(露骨なものあれ、マイルドなものであれ)を持つ白人の成長を描くことで、彼を簡単に赦してしまっており、人種問題に一種の解決を見出そうとする映画の構造は変わっていない・・・と乱暴にまとめてみるとこうなるだろうか。要するにこの映画はリベラルを自称する白人たちが求めるような映画であるが、そのような異人種間の関係を温かいまなざしで描いた本作が当事者である黒人たちには、寒々しく映るのだ。

 本作を未見の立場でありながらではあったが、とりあえず「いい話」として日本に紹介されている本作に対する違和感を表明しておきたかったので、上記の内容を紹介してみた。興味のある方は是非本文を読んで頂きたい。

 

 

 追記:

 見事に『グリーン・ブック』が作品賞に輝いた。脚本賞を受賞したスパイク・リーの反応は以下の引用の通り。

. . . When "Green Book" won best picture, he made a disgusted gesture and started walking out of the theater as "Green Book" producers gave their speeches. Backstage, Lee said "No comment," when asked about the coronation of "Green Book," which detractors complain has a retrograde view of race. 

Oscars 2019: ‘Green Book’ Is Best Picture; Rami Malek and Olivia Colman Win - The New York Times

(拙訳)

 『グリーン・ブック』の作品賞受賞が決まり、スパイク・リー監督はうんざりした身振りをして、本作のプロデューサーが受賞スピーチをする中、会場から退場し始めた。舞台裏にてこの受賞について訊かれたリー監督は「ノーコメント」。この作品を、時代遅れな人種観を持つ映画だとして非難する者もいた。