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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

鏡張りの部屋での格闘シーン

 映画をランダムに見ていると不思議にも点と点とが繋がることがある。その中でも気づく度に嬉しくなるのが、鏡張りの部屋で闘うというシーンだ。

 恐らく最も有名な例はブルース・リー主演の伝説的名作『燃えよドラゴン』だと思う。

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 でも、これの元ネタは、これまた伝説的監督オーソン・ウェルズの『上海から来た女』だったりする。

 

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 全く繋がりそうにないこの二作のクライマックスが同じ設定であることを思い出す度に驚いてしまう。ここ数年の映画にも鏡張り部屋のシーンがある。80年代ホラーの影響が強い『ザ・ゲスト』でも、鏡張りの部屋での逃走シーンが描かれる。

 そういった中でも特に好きなのは『ジョン・ウィック2』の終盤の格闘シーン。正直ここまで引き込まれるとは思ってなかったが、このアクション映画シリーズ、すごぶる面白さ。3部作の完結作が楽しみで仕方ない。

 

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『デンジャラス・プリズンー牢獄の処刑人ー』

 前から海外サイトで紹介されてたのをチラっと見たことがあって印象に残っていたけど、まさか日本で観られるとは思ってなかった。この点に関してはTBSラジオアフター6ジャンクションで取り上げてくれていたことに感謝。

https://www.amazon.co.jp/dp/B07DGMK1YY/ref=cm_sw_r_tw_dp_0.-YBbQM0E2EB

 70年代の男くさい、ドライな犯罪映画の感じがとてもよかった。主人公(アメリカコメディ映画好きにはおなじみのヴィンス・ヴォーン)、「時間のあるときに鍛えてるから」っていう理由があるにしろ、ありえないほどの怪力男。アクションものろのろした動きから腕やら首やらボキボキ折っていくんだからまあ恐ろしい。2時間12分と結構長尺な映画で少し前半ダレるけど、拾い物として見るには十分すぎるくらいの面白さ。この監督の今後に大いに期待。

 

2018年9月の傑作Netflixドラマ 2) ボージャック・ホースマン シーズン5

 Netflixのオリジナルコンテンツは本当にすごい。巨額の投資から成立しているこの囲い込み戦略は間違いなく成功していると思う。その中でもあまり日本で話題になっていないので結構残念なのがBojack Horsemanというアニメ・シリーズ。

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(ちゃんと日本で紹介してるライターって上の記事を書いた真魚八重子氏くらいしかいない気がします)


 このアニメはオリジナルコンテンツの中でも5本の指に入るほどの傑作ドラマだと思う(一話30分前後の形式が一番見やすいからかもしれないが)。芸能業界の矛盾や欺瞞を突くネタも満載だし、ビジュアル的に笑わせてくるのも楽しい。
 しかし、この作品が素晴らしいのは、とことん視聴者にギミックとは言えないほどの絶望を見せつけてくるところにある。主人公の少しばかりの成長がまたすぐさま帳消しになり、この世の地獄が本人の前に立ち現れてくる。といっても、その地獄は本人の心の奥深くに閉じ込められてきただけ、であったりするのだが。
 それゆえ観る側は結構精神的に余裕がないときついところがある。でも、一見の価値はあると思っている。これほどユーモアとペーソスが絶妙に絡み合った作品を見たことがないくらい凄い作品だと思う。

 9月に配信されたシーズン5のおすすめ回は第1・2・6・10話。一話だけ見るなら第6話かなと思います。

 

 あと9月配信で傑作だったのは、『アメリカを荒らす者』(American Vandal)のシーズン2。内容はすごく説明しにくいのでとにかくご覧あれ。アメリカ青春残酷物語の最果てに待つものは?

2018年9月の傑作Netflixドラマ 1)アトランタ

最近見終わったNetflixのドラマがどれも面白かった。とりあえず『アトランタ』について紹介する。
 
俳優、脚本家、ミュージシャンなど多方面で活躍するドナルド・グローバーが出演するコメディドラマの『アトランタ』はシーズン1がNetflixで見られるようになっていた。まだブレイクしていないラッパー、ペーパーボーイと謎の友人とグローバー演じる大学中退の無職のアーンが、暴力と隣り合わせでいながら日々を何となく生きている様子がどこか面白い。おすすめの回は黒人のジャスティン・ビーバー(!)が登場する第五話と、架空のトークショーが展開する(CMも創作)第7話、そして傑作スリラー『ゲット・アウト』のドラマ版ともいえる第9話。第二シーズンも最近ケーブルテレビチャンネルのFOXにて一挙放送していたので、また観る。
 
 

Searchingの先駆け的Modern Family傑作回

 全てがPC画面内で展開するスリラー映画Searchingが話題のようだが(もちろん、というか順当に未見)、このニュースを知ったとき、どこか既視感があった。
それもそのはず、Modern FamilyというアメリABCテレビシットコムが一回全く同じようなことをやっていたからだ。娘がどこに行ってしまったか心配でならない母親が、夫や他の子供たちからの連絡にも適宜応対しつつ、SNSやメール、グーグル検索などを駆使して何とか娘の居場所をつきとめようとする回。探せば探すほどヤバそうな真相にたどり着きそうになる母親。もしかして今の彼氏と駆け落ちしてラスベガスで結婚式を挙げるのでは?とか思ってパニック状態に陥る母。あくまでもコメディドラマなので気軽に見られるが、目まぐるしくPC画面上に映るものが変化する様子は正直観ていてめちゃくちゃ面白かった。未見の方は是非。
 

芝山幹郎の映画評論・コラム連載媒体まとめ

著名な映画評論家である、芝山幹郎が今現在どこでどのような連載をもっているか、少し調べてみました。完全に網羅出来ているかどうか自信はありませんが、少なくとも結構な数は見つかりました。

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週刊文春 星取りチャート (毎週 http://bunshun.jp/category/chinema-chart

暮らしの手帖「シネマ・シバヤマ」(隔月) 

GQ Japan コラム (不定期)

週刊エコノミスト「アートな時間 映画」(月1)

日本経済新聞 日曜版「名作コンシェルジュ」(月1)

キネマ旬報不定期) 

 

NUMBERコラム(スポーツ)

 

BSジャパン シネマ・アディクト(毎週日曜?)

 

文春とJapan GQ以外の場合、無料のネット記事はなく、紙媒体で読むのが一番早いようです。地元の図書館で「シネマ・シバヤマ」、ほぼ毎回読んでいますが、的確な表現と造詣の深さでもってぐいぐいと読ませる感じがとても心地よい評論です。

芝山氏の映画話を実際に聞いてみたいという方には、ぜひTBSラジオのアフター6ジャンクションの特集を聞いてみてください。めちゃくちゃ面白いです。

www.tbsradio.jp

『シング・ストリート』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

 遅ればせながら『シング・ストリート』(アイルランド、2016年)を観ました。音楽と人間関係における喜びにあふれた映画で、観ていて楽しかったです。

 このブログはアメリカ映画を主に扱うブログなので、一応アメリカ映画と絡ませて話を広げたいと思うのですが、この映画は「向こう岸」に見えるイギリスそして遥か彼方にあるアメリカのポップカルチャーへの憧れが強い作品で、デュラン・デュランザ・キュアーホール&オーツ(挿入曲"Drive It Like You Stole It"は明らかに彼らの"Maneater"を元にして作られている)などの楽曲が登場しています。それを見ているだけでも面白かったのですが、個人的に結構気になったのが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(以下BTTF)への言及があったことです。

 主人公が結成したバンドのPVを作るにあたって、彼らはBTTFに出てくる50年代の高校のパーティー(プロム)を参考にするのです。要するに、当時(1985年)のアメリカにて描かれた1950年代の「古き良きアメリカ」の1ページ(それが単に幻想にしかすぎなかったのでは?という歴史的指摘については例えばディヴィット・ハルバースタムの『ザ・フィフティーズ』が参考になります)が海を越えて同時代のダブリンの高校生に届いて・・・という流れを約30年後の2016年にまた描く、という形で何重にもアメリカのイメージが再生産されていくのです。こうやってリアルタイムで生きてこなかった人間が、ある時代に憧れていくんだろうな、と思う訳ですが。

 ちなみに、この映画は1985年のダブリンが舞台ですが、実際にBTTFが上映されたのは1985年の12月だったそうで、登場人物が既にその映画を観ていたという設定は本当はおかしいそうです。ノスタルジーの中にアナクロニズム(時代錯誤)が潜んでいた、という点は興味深いと言えるかもしれません。

www.imdb.com