[PR]カウンター

アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

イカとクジラ~アメリカ映画の中の”離婚”とは?

 『イカとクジラ』という2005年の映画を見た。監督は、ノア・バームバック(『ライフ・アクアティック』『マダガスカル3』脚本。最近では『フランシス・ハ』監督)。

 

イカとクジラ オリジナル・サウンドトラック

 単に短い映画が見たいと思って選んでみたら、結構面白かった。

 80分という尺の中で、繰り広げられる人間ドラマは非常に濃いんだけど、ドロドロとはせず、サラっと流れていく悲喜劇として描かれている。

 両親の離婚が中核となっているこの映画では、<父チーム(父と兄)>と<母チーム(母と弟)>という対立が描かれる(最初のテニスシーンでのチーム構成どおり)。

 互いに、好きな(というか”盲信”する)親の意見は無批判的に聞き入れ、チーム間の断絶がより明確になっていく。

 それに、関係が崩れていった両親の影響か、長男は自分の関係も上手く行かず、弟は混乱とストレスとで行き場所を失ったリビドーが暴発。

 最終的にはその対立に揺らぎが見えるのだが、ラストシーンは個人的思い入れから解釈が多少なり変わるような気もした。

 

 この映画を見てしばし思ったのは、アメリカにおける「離婚の精神的ダメージ」だ。僕自身がアメリカに住んでいたころ、中高の同級生の中で、両親が離婚していた人は割といた印象がある。ただ、「今週末は親父の家に行くんだ」とか「父親が二人いるとパーティーも二倍出来るわね」とか、日常的な会話でよく出てくることだったし、話している側もそこまで気にしているようなそぶりを見せていなかった。

 もちろん、彼らの本心がどうだったかは別問題だろうが、少なくともアメリカ映画(大きく見て戦後のアメリカ映画)では「離婚」は結構シリアスな問題で、子どもが突然困惑し、彼が抱いていた世界観(=友人+両親)の見直しを強いられる。

 

 このブログの第一回目の投稿でも扱った『クレーマー・クレーマー』なんてまさしく離婚問題が主たるテーマであって、母親が好きだったクレーマー家の息子は、両親が離婚することになり、突然父親と住まなければいけなくなる。ようやく父との生活を楽しく思えるようになったと思いきや、母親がまた息子と一緒に住みたいと懇願するようになる。両親が揉めるせいで、息子ビリーの”おうち”はなかなか固定化しない。

 

 

『クレーマー、クレーマー』~昔の話でもない(?)離婚問題 - アメリカンにアメリカ映画を観る!

 

 

 また、60年代に全米中を駆け回った大詐欺師による実話を映画化した痛快コメディ・ドラマ『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』においても、そもそもディカプリオ演じる主人公フランク・アバグネイルがまた高校生なのに、詐欺行為を始めたそもそものきっかけは、あれだけ仲が良いと思っていた両親の離婚が成立してしまったからだ。当時の離婚は、まだ相対的に珍しく、まだ18にもなっていないフランクにとってはショックだったという訳だ。それゆえ、彼は家を出る。もう両親という神話が崩壊してしまった現実の世界を彼は直視出来なくなっていたのだ。

 

 

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン [DVD]

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン [DVD]