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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

アメリカ大統領選というスペクタクル (1)

  一応このブログはアメリカ映画を主に取り扱っているが、アメリカ大統領選(の候補者選び)がヒートアップしていく中、まあ避けては通れない道ではあるだろうなと思い、今の大統領選について色々思うことを書き留めておきたい。

 多くの指摘が既にあるかと思うのだが、アメリカの大統領選は国民が自らの手で自国のトップを選ぶということでかなりのお祭り的な騒ぎになる一大イベントだが、このような見世物(スペクタクル)性は日本の選挙にはないため、あまりピンのこないところもあるかもしれない。ただ、これは単に「政治」の枠組みで語るようなものではなく、良くも悪くも、一種のショー、エンターテインメントの要素を常に孕んでいるものだと考えるなら、アメリカの大統領選も、アメリカ映画とある種繋がることは完全な放言にはならないと思う。

 ここで興味深かった記事をいくつか数回に分けて紹介していきたいのだが、まずはこれから。

 

www.youtube.com

 これは"Last Week Tonight with John Oliver"という、イギリスのコメディアン、ジョン・オリバーが、アメリカの時事ネタについて面白おかしく語るという風刺番組だ。YouTubeで全編が見られるので、私自身も気になるエピソードは見ている。

 放言、暴言の尽きない共和党候補のドナルド・トランプ氏について、ジョン・オリバーは当初取り上げたくなかったらしいが、現段階で彼の止まらぬ進撃ぶりを見てついに彼も20分かけてじっくり彼の言動を検証することとなった。

 もちろん、トランプという存在はあまりにも「おいしい」ネタ(政治をあつかったブラック・コメディで出てきそうな存在がそのまま具現化したかのようだ)なのでこれまででも風刺の対象となってきたが、今回はきちんと彼の言説のどこがどうおかしいのか真面目(かつユーモラスに)に一つ一つ検証している。

 億万長者として知られるトランプ氏は、無意味なビジネスに手を出して、実際破産して多額の借金を抱えていた(今どれだけあるのかは定かではない)ことは娘の証言でも明らかになっているし(つまりビジネスマンとして失格)、過去のツイートとは全く正反対のことを言っているし、訴えてやるぞと多方面で脅す割には何もしないし、トランプ支持者が如何に彼の大胆な発言だけを頼りにして、事実を把握していないかがよく分かるプレゼンになっている。

 ただそれだけではコメディにはならないので、最後に切り出された衝撃の事実は、コメディアン、ジョン・スチュワートの本名が、ジョナサン・リーボウィッツだということを過去のツイートで非難していたにも関わらず、自分の先祖の苗字はトランプ(Trump)ではなく、ドランフ(Drumph)だったということだ。という訳でツイッター上で流行り始めたのが、#maketrumpdrumpthagain (また「トランプ」を「ドランフ」に戻そう) というツイート。これはトランプの今のスローガンである、Make America Great Again (またアメリカを偉大な国にしよう)から来ている。

 分かりやすく解説するのももちろん大切だとは思うが、やはりユーモアの重要性は忘れてはいけないと思った次第です。

 

バック・トゥ・ザ・フューチャーの「たられば」を考える

 BSプレミアムで今日21:00-23:00の時間帯で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の再放送をやっていたので、何回目かもう覚えてはいないが、つい最後まで見てしまった。

 SFアドベンチャーとして紹介されていた映画(しかもスティーブン・スピルバーグ製作総指揮とクレジットされても、監督のロバート・ゼメキスの名前は紹介文に出したところで知名度に欠けるためか、書かれていなかった。最新作『ザ・ウォーク』が公開中なのは関係なかったのだろうか)だが、この映画はやはり笑える映画であり、名コメディ映画として観るのは全くをもって間違っていないと提言したいところだ。個人的に、映画は、笑えるところはすかさず拾っていく方が楽しいと思う。

 さて、今回何気なく観ていて一番思ったのが、そもそもこの映画は続編を想定していなかったところだ。本作は、ドク・ブラウンが未来から舞い戻り、マーティと彼女のジェニファーに、「未来に戻らなければならない(back to the future)、君たちの子供も大変なことになっている」との旨を伝え、今度は空飛ぶデロリアンで2015年へと旅立つシーンで幕を閉じる。

 しかし、この続きを想定していなかったのならば、タイムトラベル物の3部作として名高い本作が強調するのは、両親の口からは絶対聞き出せなかったであろう彼らのヒストリーを暴いていく物語であり、”奇妙な”(コメディタッチで仕上げないとなかなか大変な話になる)青春ものでもあるという点だ。公民権運動も、スケートボードも、黒人と白人音楽が融合して誕生したロックンロールも、ティーンの白人が生み出したものであるという、歴史改変的な要素を指摘する評論家は少なくないが、よく考えてみれば、1985年に生きるマーティの両親の語る過去はウソばかりで、このことこそ本作の描く1955年が映画の描きたいフィフティーズであったことを皮肉にも物語っている、というのは言い過ぎだろうか。

 また、2作目も3作目も作られて本当に良かったと思う次第なのだが、それでも1作で完結していたと考えるとなると、未来は本当に「未だ来る」存在で、マーティとジェニファーの子供(冷静に考えてみると、もう結婚していて子供もいるという話にそこまで二人が何とも思っていない?もうちょっと喜ぶなりしてもいい気はするが)がトラブルメイカーになっているのか、分からないまま終わるはずだったのだ。それは、本作の描く、親子関係が逆転することで明らかになる父子、母子の類似点・相違点が、そのまま子供たちに引き継がれていくことすら暗示しているのかもしれない。続編が実際存在する以上、これらは妄想にしか過ぎないのだが、考えの枠組みを本作のみに限定してやると、かなりBTTFの世界はトリッキーな青春もの、両親の過去暴露ものとしてまた違う見方が出来るのかもしれない。

スピルバーグの『激突!』の意味

 『ブリッジ・オブ・スパイ』が公開中だからなのか、気づいたらスピルバーグ出世作『激突!』を借りていたので、観てみた。

 ストーリーは至ってシンプルで、先を急ぐセールスマンが追い抜いたトレーラーに執拗に追いかけられ、命まで狙われるというものだ。

 ガレージの暗闇の中からバックで車道に出るシーンから、主人公デイビッド・マンの、夕日に映える横顔のシーンまで90分足らずである。

 

 既に指摘されていることではあるが、David Mannは、まさしく平均的男性、ないし人間の象徴であって、それが運転席がよく見えないトレーラーに追いかけまわさせる話なのだから、この映画における重要な構図は人間 対 機械 (man vs machine)だろう。

    カメラは終始デイビットの言動にフォーカスしていて、車の独立した意志は強調されない一方で、トレーラーの運転手の顔は全編を通じて一度も出てこない。スピルバーグ本人も、トレーラーの車種は、車が人間の顔に似ているかどうかで決めたらしく、ここに「自動車に乗る人間」と「人間を乗り回す自動車」という二項対立が明示されている。

 そして、その構図はクライマックスで顕著だろう。デイビッドは、自らの名前が刻んであるスーツケースをアクセルの上に置き、ギリギリのタイミングで車内から飛び出す。トレーラーと彼の乗用車が正面衝突する様は、まさしく人間対機械の一騎打ち、原題のduel,決闘なのである。

 なお、この決闘とはまさしく西部劇におけるそれである。ラストの勝負の場は、何も周りにないような乾ききった山で、互いの銃を引き抜いて早打ちするように、猛スピードで両者は”激突!”する。

 崖へと真っ逆さまに落ちていくトレーラーだが、その中には運転手の姿が見当たらない。となると、まさしく彼はトレーラーの一部、トレーラーの亡霊だったのだろう。そして、『フランケンシュタイン』よろしく、車というモンスターを作り上げた人間がどうにか、そのモンスターを退治したということになるのだ。

『クリード』は成功作なのか?(解説・分析)ポッドキャストEp.05

ポッドキャストの第五回をアップロードしました。ロッキーシリーズの事実上続編の『クリード』について、未来世紀サクライの韓くんと話しました。

前編

今回は新たなゲストをお呼びして、『ロッキー』シリーズのリブート作品である『クリード』について論評しました。前編はネタバレなしです。
シリーズ過去作も踏まえた上で、本作の何が新しいのか、話しました。

mrjohnnydepp.seesaa.net

後編

クリード論、後編です。結末についても話しています。
ロッキーシリーズに伺える「死の匂い」とは?
結末をどう解釈すればいい?
クリード2・3、どうなる?

mrjohnnydepp.seesaa.net

ポッドキャストで話していた『ロッキー・ザ・ファイナル』のエンドクレジットのシーン。いつかやってみたいものです。


Rocky Balboa End Credits

 

スターウォーズ批評を批評する!後編(ポッドキャスト・言及リスト)

 年末にアップロードしたスターウォーズ批評の批評についてのポッドキャストの後編です。

 本編はこちら

 https://itunes.apple.com/jp/podcast/epi.04-hou-sutau-ozuno-pi/id1065481891?i=359863817&mt=2

 (前編はこちら)

ykondo57.hatenablog.com

要点としては、 

スターキラーはスカイウォーカー?
あの衝撃的な展開は実はあのシーンと重なる?
FN-2187の秘密とは?

ということですが、最後のフィンのナンバーの謎に関しましては町山さんが

有料音声の中で解説されているようです。ただ、既に指摘されている論評はいくつか見つかりました。

例えば英語ではこの記事が興味深いです

www.telegraph.co.uk

(Telegraph紙の記事:FN-2187:なぜジョン・ボイエガのストームトルーパーの番号がスターウォーズの鍵を握っているのか)

日本語では清水節氏のコラムに詳しいです

eiga.com

 やはりライムスター宇多丸氏の映画批評もかなり参考になります

TBS RADIO ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

 

americannieiga@gmail.comにまで次回のトピックのリクエスト、今回あるいはバックナンバーへのコメント等、お待ちしております。どうぞよろしくお願い致します。

 

 

スターウォーズ批評を批評する!前編(ポッドキャスト・言及リスト)

 年末にスターウォーズ最新作の批評について批評(?)しましたので、言及したもののリストを含めた後記を載せておきます。

 本編はこちらからどうぞ→

 

https://itunes.apple.com/jp/podcast/epi.04-qian-sutau-ozu-pi-pingwo/id1065481891?i=359816744&mt=2&at=10l8JW&ct=hatenablog (前編)

mrjohnnydepp.seesaa.net

 

 

(前編) 

SW最新作の批評、評価について考えていきます。
日本と海外とでの評価の違いは?称賛のポイントとは?
悪役=現代的テロリスト,厨二病とはどういうこと?

 

 今聞いている中でもとりわけ良質なポッドキャスト

 A Cultural History Of ‘Star Wars’ (So Far) by The Cracked Podcast | Free Listening on  SoundCloud

    事前予想の一例

「神話的な物語群」 思想家・内田樹さん、SWを語る:朝日新聞デジタル

   ポッドキャストでも言及した、海外での映画の反応を見るには絶好のサイト

 IMDb  

 Star Wars: The Force Awakens (2015) - IMDb

 Rotten Tomatoes

 http://www.rottentomatoes.com/m/star_wars_episode_vii_the_force_awakens/

   yahoo映画

 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 - 作品 - Yahoo!映画

 海外での批評

www.slate.com

 TBSの文化系トークラジオ

 

www.tbsradio.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故私たちは友達になれないの?Why Can't We Be Friends?

最近、TBSラジオ番組ばかり聞いている毎日で、菊池成孔の粋な夜電波のバックナンバーを今日聞いていたら、そのラストナンバーがこの曲だった。

www.youtube.com

 

 題名は何となく知っていたけれど、この放送回がパリでの同時多発テロを受けてのものであったという文脈を踏まえて聞いてみると、より一層感慨深い曲であった。

 湿っぽい曲かと言われると決してそうではなく、明るい曲調でWhy can't we be friends? (何故私たちは友達になれないの?≒ねえ、友だちになろうよ、くらいのニュアンス)というメッセージが何度も何度も歌われる訳でどこか切ない気分になる一曲だ。