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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

過去⇔現在~『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

 主人公は、とにかく、書く、走る、踊る。本作は、アクションに満ちたシークエンスから始まり、その物語を駆動する力を落とすことなく、4姉妹の人生をしっかりと描いていく。本作は、単なる時系列順に物語る直線的な構造とは異なり、しっかりと過去と現在とがどのように対照的に立ち現れていくのか、これでもかと言わんばかりにはっきりと示す。おそらく過去は右から左、現在は左から右への方向を意識したショットで組み立てられていた。現在における会話の断片から、過去に埋め込まれた伏線を遡ってたどっていくことになるが、その作業自体は一観客として全く苦にならなかった。過去(オレンジ)と現在(青白)の色が合流する、着地点を最後に見せるところはとても良かった。ラストショットは現在の色調を主に使っていながら、壁の色は明るいオレンジ。あれは過去と現在の融和点(妥協点ではなく)であったと信じたい。 

 ちなみに、「どっちがどっちの話か分からん」とぼやくアカデミー会員がいたようだが、そのような自分のリテラシーの低さを、たとえ匿名とは言えど堂々と示してしまうことを恥とも思わぬような類の人間が、恐らく世界で最も有名な映画賞の組織内にたしかにいるという事実だけは心得ておいた方が良い。

 それとは別にティモシー・シャラメはその圧倒的な美貌ゆえに、自身の演じる性格の危なさ(というか害悪)をあまり意識させないのがすごい。というか端的に恐ろしい。いうなればファム・ファタール(運命の女)ならぬオム・ファタール(運命の男)だろう。自身の出演作におけるティモシー・シャラメ、0を「素敵な恋する青年」、そして10を「周りを破滅させるヤバい奴」だと規定して、「シャラメ・スケール」を勝手に作ってみる。そのスケールにおいて、"Call Me by Your Name"のシャラメは3、"Hot Summer Nights"の場合、8か9(あれ以上"ヤバい"役と言えば、シリアル・キラーくらいでは?)だとすると、本作の彼は6か7だとするのが筆者の意見である。