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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

ディザスター・アーティスト 映画の中と外

 


The Disaster Artist Teaser Trailer #1 | Movieclips Trailer

 

 映画の中

 アメリカコメディ界の巨匠、ジャド・アパトーが世に問うた『40歳の童貞男』を「ブロマンス映画」(男友達の友情映画)元年とするならば、はや15年近くが経過したことになる。今なお同型の映画に関わり続けるジェームス・フランコは、本作でとうとう後世にカルト作"The Room"として知られることになる、かの「史上最大かつ最高の駄作」の裏話にまで手を出すこととなった。

 肥大しきったエゴとそれを見事なまでに反映する無能さが祟り、予想通り映画製作は難航を極める。しかし、最終的に主人公たちの元に残されるのは、一本の「愛すべきおバカ映画」、まさしくアパトーギャングが作り続けた映画と激しく共振するものなのだ。しかも本作では、監督・主演のジェームス・フランコの弟であるデイブ・フランコが助演を務めており、文字通りの「ブロマンス映画」に仕上がっている。

 

 映画の外

 しかしながら、ここまで力強い喜劇を作り上げたジェームス・フランコ本人は、一連の#MeToo運動の流れにおいて、セクハラ告発を受けている。『ディザスター・アーティスト』の主人公は、自身が是が非でも作りたい映画"The Room"の監督なのだが、彼がベッドシーンを自ら演じる際に本人がほぼ全裸で登場してくる。そこで問題がまさしくセクハラに該当するもので、主人公とその親友との間に亀裂が生じることとなる。実際のところ、そのベッドシーンにおける女優は、タフに現場対応しているのだが、そういった監督の責任は問われることもなく、再び作中で検証されることはない。そんな主人公を監督ジェームス・フランコは、期せずして、か否かは分からないが演じている訳だ。『ディザスター・アーティスト』におけるディザスター・アーティスト(散々な、壊滅的な芸術家)は、数奇な映画人としていわば愛される運命を辿ることになるが、そういった舞台映画を作ったジェームス・フランコを同列に見ることはできないだろう。