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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

「クラシック・ロック」が意味するもの

 時たま、無性に「クラシック・ロック」が聴きたくなる。

 Wikipedia上の定義を敷衍すると、「クラシック・ロック」とは、60年代から80年代にかけての、いわゆるハード・ロック、ブルース・ロック、アリーナ・ロック(これはスタジアム等の大規模のライブ会場で演奏するのに適した、”盛り上がる”曲のジャンル。KISSやボン・ジョヴィなど)のことを言う。

 日本ではあまり聞かない言い方だと思うが、「クラシック・ロック」を一日中流しているラジオ局も少なくない。

 Wikipediaでは、この場合の「クラシック」とは、「古臭い」「古典的」(要は「クラシック音楽」的)という意味ではなく、「優れている」「大衆的」の意味で用いられているとある。「ロックの古典」という意味合いもあると記されている。個人的には、「ロックの古典」というところが重要だと思う。

 ロックは、1950年代、保守的な親たちに反抗する手段としてアメリカで産声を上げた音楽だと言われる(ただし、イギリスにその影響は及び、英国産のロックが逆輸入されることになる)。要は何でもいいから、凝り固まった社会の枠組みをぶち壊すことが目的だったのがロックだと言っても過言ではない。

 しかし、その数十年前に生まれた楽曲群を、シェイクスピア夏目漱石のごとく「古典化」して、大事に大事にするのもどこか妙な気はする。

 これは、実は人種の問題とも絡んでくる。

 白人音楽と黒人音楽がミックスして生まれたロックンロールだが、その代表格は決まって白人だ。その一方、ソウル、R&B、ファンクなどの黒人音楽に「クラシック」と称されるジャンルはない。

 文学の世界では、聖典(キャノン)と呼ばれるものがある。「これぞ文学」とされるような、”名作”文学のことを指す。これも、後になって白人男性の作家ばかりだという批判を受けて、キャノンの権力性なるものへの再考が迫られてきた。

 結構オープンだと思える洋楽の世界でも、無自覚なままにそういった構造が生まれているのかもしれない。

 こういうことを思ったのも、以下の記事で、ビートルズよりも、ヒップホップの方が音楽的影響力は総じて大きいという内容の主張を読んだからだ。

最も影響力の大きい「音楽ジャンル」が判明!科学者が17,904曲を検証してわかった音楽史の真相とは? | TABI LABO

これには賛否両論があるだろうが、たしかにヒップホップの影響なしに今の音楽は決して語れないだろう。しかし、「これまで「Song of the Year」や、「Record of the Year」にヒップホップレコードが選ばれたことはない」のだ。自分もまだまだヒップホップには疎いのだが、この指摘には目からウロコだった。政治的コンテクストなしに、ポピュラー音楽でさえ語れなかったりするときだってあるのだ。