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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

ヘザース/ベロニカの熱い日

『ヘザース/ベロニカの熱い日』(1989年・米)は、DVDのカバーだけ見ると、普通の青春モノに見えるが、これは至ってブラックなコメディだ。

高校生ベロニカは、いずれも名前をヘザーというお嬢様生徒の3人組、“ヘザース”に気に入られようと彼女たちの言いなりだが、彼女たちやアメフト部、チア部が大手を振る高校生活にうんざり。そこへJDという男子生徒が転校してくるが、彼はいきなりアメフト部に反抗する態度を取る。ベロニカは彼に共感し、つい“ヘザース”を殺したいと彼にこぼす。なんとJDはそうしようと同意。ベロニカ以上に本気で殺害計画を企てていく。(WOWOW公式サイトより 

ヘザース ベロニカの熱い日|映画|WOWOWオンライン

 

 青春モノのブラックコメディと言えばいいだろうか。個人的には、エンディング以外はとても好きだ。

 へザースが、ベロニカの家でするクロケットのボールが、各々の色に分けられていてそれを小突きあうシーンが好きだ。互いの力関係がよく分かる。

 ちなみに、このJDという男は、トニー・スコット監督、タランティーノ脚本の『トゥルー・ロマンス』に登場する、クレイジーな主人公。やってることは基本一緒だ。

 (ネタバレ注意) 

 

 

 

 

 僕がこの映画のラストに不満だったのは、そもそも映画全体の構造だったことがよくよく思えば分かった。

 要に、JDという、学校という社会における反分子が死んでも、スクール・カーストの構造は依存として変わっていなかった。思い出してほしいのだが、その構造があるがゆえ、学生の自殺が相次いだ(JDの仕業なのだが)ときにそのカーストの下層の人間は本当に自殺を試みることとなってしまった。

 それに、一番の問題はベロニカが上手いこと手を汚さずに済んでいることだろう。

 1)ミルク・オレンジジュース→ヘザーはJDのドリンクを飲む

 2)林での銃撃→”はずみ”で撃ってしまったような描写

 3)最後の一騎打ち(JDとベロニカ)→結局、JDは自爆する

 たとえ、ベロニカがこれに不運にも巻き込まれてしまったと見ても、アメリカン・ニューシネマ(つまり60年代後半から70年代中旬までの一連の映画)だったら多分彼女はまきぞえを喰らって自分も命を落としていたかのように思える。

 だが、この映画ではJDという悪を倒して、何故かそれでヘザーなき社会に、新たなヘザー的存在として君臨してしまうことになる。カーストを問わず同級生と接していく姿は明らかに描かれているが、それはそれでどうも腑に落ちない。皮肉にも、そこまで這い上がれたのは、JDがもたらしたものの他でもないからだ。

  一応これは80年代の映画なので、悪い奴をとりあえず倒す奴は、それがどうであれ報われてしまうのだ。