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アメリカンに映画を観る!

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フライト 徹底解説 ~この映画の裏テーマ・サブテクストとは?あの歌の意味は?

 『フライト』(米・2012年)。

 


映画『フライト』予告編 - YouTube

 

 なかなかいい映画だと思った。

 前半は、飛行機不時着の全貌を描いたパニック映画になっている。しかし、問題はここからであって、後半は、その後、主人公のパイロットが、大量のアルコールを摂取した状態で飛行機を操縦していたことが判明し、ヒーローから犯罪者へと一気に落ちていく危機をどう回避していくかが問題となる裁判映画へと変化していく。

 前半に限らず、様々な悪気流をくぐり抜け、主人公はどこに至るのか?この点が一番の見所だろう。

 ただ、この映画にあるのは、別のテーマである。この映画には、宗教心、あるいは決定論というサブテクストがある。

 ここからはネタバレです。

 

 

 

 

  この映画を振り返ってみると、都合良く(当初は都合”悪く”)様々な出来事が起こり、それらが上手く収斂していく。偶然にしては出来すぎな展開だ。(もちろん映画だから当然なのだが)

 プロットを大雑把に振り返ってみると、

1)飛行機が突如故障、奇跡的に不時着陸する

2)乗客の大多数が助かる

3)入院中、末期ガンの患者が神について話す

4)アルコール依存は直らず

5)しかし、敏腕弁護士の手により状況は好転

6)禁酒をしていたが、”うっかり”泥酔

7)尋問の際、"God, help me"と一言。真実をバラす

8)刑務所の中で”自由”を手にする

 

 3)の場面で、全ては神のなすことであって、単純な因果関係で説明は出来ないという話があったが、まさに主人公が対峙するのは、説明しようのない一連の不条理な出来事だ。のちに飛行機事故が”不可抗力”とされたが、原語のセリフだともっとわかりやすい。"act of God"、つまり神の御技とされていた。

 この出来過ぎな話は、神の見えざる手によって導かれたものだ、と考えることは出来る。もっと言えば、悪魔なる存在に、主人公が打ち勝つという話だろう。

 神の御技という観点から見れば説明がいくことも多い。尋問の前日に、主人公の隣の部屋の窓が開いていたり、God, help meと言って、全てを話し、刑務所に入れられるが、そこで初めて自由を手に入れたと言っていたりと、数々の不条理(=神の御技)にも思える試練を突破したように取れる。ただ、こういった一連の出来事にロジカルな理由を要求しても、理由なんて人間には分からない、という末期ガン患者の話に戻る(あのシーン、やたら長かったのはそういうことかもしれない)

 ここで、売人のMaysのことを思い出してほしい。

 彼が登場する際、いつも聞いている曲はストーンズの"悪魔を憐れむ曲”なのだ。

 その曲の歌詞は、悪魔が一人称で、自分が見てきた、あるいは関与してきた様々な歴史上での出来事(キリストの死、ケネディ大統領の暗殺など)を語る内容だ。

 要は、彼が悪魔で、Whipを酒とドラッグ漬けにしてきた存在なのだ。彼に頼っている限りでは、彼は一生”自由”になれなかったのである。あの尋問も、彼の荒療治によってあと一歩でウソを突き通すところまで行っていた。映画も小説も漫画もそうだが、物語における”悪魔”はそれと分かりやすい容貌をしている必要はない。

 

 蛇足になるかもしれないが、Whipがコカインを決めて、尋問の場へと向かうエレベーターに乗っていた際にかかっていた音楽はThe BeatlesのWith a Little Help from My Friends。サビの一節が"I get high with a little help from my friends(友人の助けをちょっと借りて、俺はハイになるんだ)”なのだから、多分本場アメリカの観客はここで爆笑していたのでは?