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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

原題と邦題について~『17歳の肖像』から『アナ雪』まで

 『17歳の肖像』(英・2009年)を観た。アカデミー作品賞の候補作にもなった作品。

 前々から好評なのは知っていたので、ふとレンタルして観てみたが、これが非常に面白かった。

 ストーリーは単純で、舞台は1961年で、イギリスの名門オックスフォード大学への進学のため勉学に勤しむジェニーが、年上の男性デイビットとふとしたことから出会い、彼と恋に落ちていくが・・・という話。

 そこで何度も頭をよぎったのが、この映画の原題のAn Education。学校教育か何かの意味かと思ってみていると、これはどうも、クラシック音楽のコンサート、豪華なレストランでの会食など、ジェニーが知らない世界を彼が教えてくれる(educate)ことを指すことが中盤では推測できるようになる。

 ただ、これはオープニングでも分かるように、ジェニーの学校教育の問題のことだ。進学か、このままデイビットと一緒になるか。Educationには、教養の意味もあるので、自らが積み上げてきた教養を捨てて、好きなことだけやっていられるディビットと残りの一生を過ごすのか?という意味もあるのかと思って映画を観ていた。

 原題のおかげで色々思いをめぐらせることが出来たと思う。

 17歳の肖像だと、何となくティーンの成長物語なのは分かるが、そこから広がるところはそんなにないように思う。

 

 

 洋画の原題の特徴としては、やたら抽象的で何の映画だかさっぱり分からないことがある。最近のディズニー映画だと、Ratatouille, Up, Brave, Frozenとか、何の映画なのかピンとこないのが割とある。これは実はジェンダー的にニュートラルなタイトルの方が好ましいという傾向があるからだそうで。

 ただ、Frozenはもちろんのこと、『アナと雪の女王』で、凍りついたエルサの王国のイメージが浮かぶタイトルだとは思う。それに、たしかに物理的にも心臓が凍る(!)世界の話なんだけど、とんでもない能力を手にしてしまって化け物扱いされるエルサの心の状態を上手く表しているとも思える。

 

 その一方で、邦題の特徴(もちろん例外はあります)としては、非常に具体的であること(かな?)。これは先述したディズニー映画の邦題に顕著なんですが、Ratatouille は『レミーのおいしいレストラン』、Upは『カールじいさんの空飛ぶ家』、Braveは『メリダとおそろしの森』。『塔の上のラプンツェル』はTangled("絡まった”。多分主人公の髪の毛だろうけど)。 

  アメリカ特有の、おバカコメディ映画の邦題も、やたら副題が長い!

 大ヒット映画Anchorman(メインのニュースキャスターの意)の続編も、『俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク(原題:Anchorman 2: The Legend Continues)』になって、Superbadという映画も『スーパーバッド 童貞ウォーズ』になっている(別に戦争ほどのことは起こらないんだけど・・・)。リストを挙げるときりがないほど、副題をつけたがる傾向にある。日本のバラエティ番組のタイトルのようになっているのですかね。

 個人的に、邦題に関しては、むしろ訳の分からないタイトルを意訳してくれていて、助かる点も多々あるのですが、一番マズいのが、タイトル自体がネタバレになっているもの。

 例えば、『レミーのおいしいレストラン』。映画をごらんになった方はご存知ですが、レミーが実はネズミだったことが分かった瞬間、エンディングが分かるタイトルになっています(!)。過程を描くのがこの映画の醍醐味かとは思いますが、それはちょっとないですよ・・・

 これはヨーロッパ映画なのですが、アカデミー外国語映画賞にも輝いた、The Lives of Others。邦題は、『善き人のためのソナタ』。実はこれ、ラストに大きく関わってくるもので、最後まで映画を見れば分かるのですが、これも半分ネタバレなんじゃないか。。。とは思います。この”善き人”って誰??と思いながら観てると、着地点は明らかです。

 

 そうは言ったものの、メリット・デメリットは、原題・邦題のどちらにも同じくらいあるもので、一概に肯定・否定は出来ないかなとは思ってます。両方のタイトルの含意を味わえるのが一番かなと。

 いい訳だなと思った映画のタイトルは、『ヤング≒アダルト(原題:Young Adult)』『がんばれ、ベアーズ!(原題:Bad News Bears)』『宇宙人ポール(原題:Paul)』『明日に向って撃て!(原題:Butch Cassidy and The Sundance Kid)』