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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

笑いが武器のメタ戦争映画 トロピック・サンダー 愛すべきおバカ映画 (3) 

 ベン・スティラーと言うと、自身監督・主演を努めた『LIFE!』や、『ナイト・ミュージアム』を連想するかもしれないが、個人的に彼の映画で一番好きなのは、『トロピック・サンダー』だ。

落ち目のアクション俳優スピードマン(ベン・スティラー)は、戦争大作『トロピック・サンダー』での返り咲きを目指すことに。コメディー役者のジェフ(ジャック・ブラック)や演技派のラザラス(ロバート・ダウニー・Jr)とともに撮影に臨むが、クランクイン5日目で予算オーバーに陥ってしまう。あきらめ切れない監督は東南アジアのジャングルで撮影を強行しようとするが……。(シネマトゥディより)  

 

トロピック・サンダー/史上最低の作戦 (字幕版)

この映画の魅力は主に3つあると思っていて、その1つは、

1)自らのイメージをぶち壊す「俳優像」の提示だ。

 ベン・スティラーは、基本、ひょろっとしていて背の低い、だらしない男として描かれることが少なくないが、この場合は、上の写真の通り、マッチョ(っぽい)。

 『アイアンマン』シリーズや『アベンジャーズ』でも、大スターになったロバート・ダウニーJr.も、この映画内では、メソッド俳優(徹底した役作りをする役者。代表例はロバート・デ・ニーロ)という設定でそれゆえ、黒人兵士を演じるために手術して皮膚を黒くしたということになっている(マイケル・ジャクソンの逆をしたといえばイメージし易いかもしれない)。話し方もいつの間にか黒人英語になっていて、正直「こいつだれだよ」と成りかねないほどの徹底さだ。その点も面白い。

 ジャック・ブラックに至っては、まぁ、余り変わらない・・・(おならギャグ満載の映画で人気を博したコメディアンという設定)

 個々の持ち味を活かすというよりも、さすがベン・スティラー監督(そう、これも彼の監督作)、他の映画では出来ないことをやって完全に遊んでいるように見える 

 

2)豪華なキャスト

ベン・スティラーは今ではアメリカコメディ界のドンとも言われる存在となっている。彼のネットワークは相当なもので、キャストは結構豪華なものになっている。

先述した3人のほかにも、

・『あなたを抱きしめる日まで』『ハムレット2』のスティーブ・クーガン

・『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒー

や、トム・クルーズまで!(完全に姿が変わっているので、あえて写真は貼らない。映画を見て、「え、これがトム・クルーズかよ!?」という驚きを是非体験して頂きたい)

3)戦争映画を描く戦争映画というメタ構造

 この作品は、おバカ映画なのだろうが、この構造はなかなか面白い。

 映画の冒頭で、迫力ある戦闘シーンが展開していく。気づけば、ベン・スティラーの片足がなくなっていたりと、深刻な事態が描かれていく。観客はこれで結構ドキドキさせられるのだが、これはたとえばブライアン・デ・パルマ監督の『ミッドナイトクロス』でもおなじみの構造である。

 

 要は、ベトナム戦争映画というジャンル(東南アジアで撮影ということは明らかに『地獄の黙示録』等の諸作品を意識しているだろう)を、外側から見ている人間たち(=この作品内の、役者たち)が、実際に戦争に巻き込まれていく(もちろん、現代の設定なので厳密にいえば、ベトナムらしきところでの戦闘であるが)。外側の人間がいつの間にか命を懸けて当事者となる。この映画内映画という設定が泥沼化したものになっていくのが、コメディタッチで描かれていく。

 ただ、アクションはしっかりしている(『ブルースブラザーズ』然り)。ふさげたコメディと思ってみると、仰天するかもしれない。

 

 エンディングは、コメディ俳優としての哀しい性に対する思いが、感じ取れるものとなっている。それと対照的に出てくるのが、(映画史にも残ってもいいと個人的に思っている)あのダンス。一度見たら、なかなか忘れられない。

他の愛すべきおバカ映画:

”爆発映画”? 『ブルースブラザーズ』愛すべきおバカ映画(1) - アメリカンにアメリカ映画を観る!

21ジャンプストリート 愛すべきおバカ映画 (2) - アメリカンにアメリカ映画を観る!


トロピック・サンダー - YouTube