では、深遠なSFの名作といえば何があるだろうか。
「ブレードランナー」は、外見はそっくりで、思考も人間のように出来るレプリカントと、生身の人間はどう違うのか?というコワイ問いを孕んでいるし、
ブレードランナー ファイナル・カット 製作25周年記念エディション [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2010/04/21
- メディア: Blu-ray
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「2001年宇宙の旅」は、人類の進化についての映画であると言える。(詳細は町山智浩著『映画の見方がわかる本』を参照してみて下さい)
上記の2本について言えば、エンタメ性はとりわけ強調している訳ではないが、SF特有の超現実的・近未来的描写に魅了されたり、設定の秀逸性に引き込まれたりする。
映画ファンの間では、しばしば高評価されているLooperも、かなり哲学的トピックを扱った作品だ。タイムトラベルを伴う話ではあるが、その矛盾はあいかわらずちゃんと説明されていないままだ(ブルースウィルス演じるオールド・ジョーも、仕組みがよく分からないといっている)
このメイン・テーマの1つは、「人間の憎悪の連鎖をいかに止めるか」であろう。
ドラッグすればネタバレの部分が読めます
最終的には、ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるジョーは、自分で自分を殺めることによって、エミリーブラント演じる、の息子の超能力の暴走を防ぐ。
非常にずしんとくる結末なのだが、そもそもそれだとナレーションが成立しない(幽霊なのか??タイムトラベルで自分の死を知りつつナレーションしているのか??)
個人的には、「これは深いけど、面白いか?」とつい自問してしまった。
トランセンデンスも(あくまでも一個人の感想ではある。えらそうにこの映画はダメだとか断言するつもりはさらさらない)、その深遠なテーマの提示の形と、観客が期待しそうなことが全く起こらなかったということが大きい(詳しくは、
トランセンデンス~イブリンの「罪と罰」 - アメリカンにアメリカ映画を観る!で)
粗雑な説明による例をいくつか挙げたが、エンタメ性(要は深いことを考えずとも楽しめる)もメッセージ性もかねた作品というのは、案外さほど多くないのかもしれない。
そもそも、そういった名作を作る定式が分かったところで、いい映画が出来るとも限らないので、難しい問題かもしれない。
(Herはその両面も備えたかなりの傑作だと個人的に思う。Herへの切り口は多々あると思うが、私はOSの肉体性と精神性に着目した。この二面性がこのストーリーの分断点になっているとも言っていい)