中島哲也監督の『渇き。』をそろそろ見ようかなと思ってるので、同監督の『告白』を見てみた。
前半見終えた瞬間、これは絶対トラウマ映画になると思いましたね・・・
中学生が、同級生・先生の娘・自分の母をどんどん殺めていくし、その描写もかなりバイオレント。教室の撮り方や音楽の使い方(レディオヘッド?)にスタイリッシュな側面を見出したものの、それゆえに、非常に気分が暗くなる出来事が連発。
話の筋というのは、幼い娘(愛美)を、自らの教え子に殺された松たか子演じる森口教師が、復讐劇を展開していくというもの。
復讐劇というジャンルにおいて、クエンティン・タランティーノ監督の作品が馴染み深いかと思う。分かりやすい例としては、『Kill Bill』『ジャンゴ』『イングロリアス・バスターズ』がある。復讐する側に観客が感情移入できるようになっているし、最後のカタルシスもちゃんと用意してある。(少なくとも『バスターズ』に関していえば)
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ただ、この映画はその正反対。
一応、一番まだ共感できうるのは、森口先生だとは思うが、復讐の手口があまりにも残酷だ。単に命を絶つというマネは全くしない。計算高く、ターゲットをじわりじわりと追い詰めていく。
しかも、他の登場人物にも感情移入できないようになっているといえよう。
少年A、少年B。どちらも実は後で彼らの動機が明らかになるものの、彼らの罪は重い。少年法で、実質無罪になることで、余計彼らの犯したことの重みが強く感じられる。
クラスメイト。少年A・Bに対するイジメが非常に体系化されていて、集団的狂気が感じられる行動を繰りかえす。
そんな中、橋本愛演じる、北原美月こと”ミズホ”だけは手を出さない。と、思いきや、実は両親殺害事件の犯人ルナシーの、「信者」であることが発覚。少年Aと恋愛関係を持つようになるし、心に相当な闇を抱えていることが分かる。
(ちなみに、愛美の父親の桜宮ですら、過去の自暴自棄な行動が、自らの死を招いたという設定になっている)
警察という外部の力が全く関与していないのは、相変わらずのストーリー上の便宜からではあるが、学校というコミュニティの閉鎖性、そこから生じる暴力・狂気が見る側にも伝わってくる。
個人的に非常に印象に残っていたのは、最後の最後の一言。「なーんってね」
終始棒読みだった(邦画見てるとその印象ばっかりなんですよね・・・やっぱり関西弁話者だからかな・・・)松たか子の台詞回しの怖さがマックスに達した瞬間だった。
あの一言は、いつも少年Aこと渡辺修哉が口にしていた言葉だ。
煮えたぎる怨讐の彼方に、森口教師がたどり着いたのは、結局渡辺と同じ狂気の境地だったのだ。もう彼女は、復讐前の彼女には何があっても戻ることは出来ないのだ。