今回は、『がんばれ、ベアーズ!』の紹介をします。ツイッターでの連投をまとめたものに補足をしました。 (↓)
【がんばれ、ベアーズ!】70年代の野球コメディ。カリフォルニアのリトルリーグに新たにチームが加入。ただ、監督は元マイナーリーグの落ち武者で飲んだくれで、子ども達も英語分からないメキシコ人、やる気のない太っちょ、短気のチビとダメダメのメンツ。
でもそこで監督がスカウトしてくるのが自分の娘(結婚せず母親とは別れた)。しかもさらなる助っ人は近所の不良。この映画よく考えれば、ユダヤ人・黒人・メキシコ人・女の子等の「マイノリティ側」が、WASPのチームに立ち向かう話になっている。
音楽が聞き馴染みのあるクラシック音楽なのだが、これが絶妙に映像とマッチしている。プレーヤーのユーモア、試合の高揚感。実はクライマックスで使われている音楽が、引用元の演劇で起こることがこの映画で起こることを暗示していたりする。
ただ子ども野球なので、勝利への執着心はむしろこの映画では「忌避すべきもの」として描かれる。最後の試合で、両監督の心情に大きな変化が生まれるのもそこから。露骨なネタばれ(とまでもいえないが)を避けて言えばこのようなもの。
リメイク版は映画館で見た。プロットは、わりとオリジナルに忠実。でもそれはプラスに働いていなかったし、微調整してる部分で少しセクシュアルな要素を増やしていたりする。そこは結構蛇足だと思ったし、現代的にしようと音楽はロック。オリジナルの方が良い。
ここからネタバレ入ります。
音楽について少し言及しましたが、最終試合の最後の最後で、不良少年のケリーがあわよくばランニングホームランのところまで行って、惜しくもアウトで試合終了。ベアーズの逆転ならず。よく聞いてみると、ケリーが大きな打球を放ったところからずっと、おどろおどろした音楽がかかってました。若干不吉な印象を与える音楽が、結局ベアーズの敗北を、彼が打った瞬間から語っていたわけで、そういう意味では、主人公の死で終わるオペラ”カルメン”(この映画の音楽はほとんどカルメンから取ってます)に通ずるものがあるのかなぁという私見です。(これはほとんど妄想ですが)
両監督の心情についてですが、ベアーズのバターフィンガー監督は最終戦を制することに固執する余り、プレーヤーに厳しく冷酷な命令を下しますが、彼と同じような心境の相手監督は、自分の息子(メガネかけてたピッチャーの男の子です)の子供心を分かってやれず、結局息子は相手にわざとランニングホームランさせてしまう訳です。そこで「野球に勝つことが一番じゃない、皆がベストを尽くしてプレーを楽しむことが最優先じゃないか」とバターフィンガーは気づくわけです。勝敗にこだわらないところがミソな訳です。
あと、最後、ヤンキーズは"Two, four, six, eight. Who do we appreciate?(2,4,6,8。誰に感謝してるかって?ベアーズさ!) Bears! Bears!"とベアーズを揶揄した同じコールをベアーズに向かってしています。最初は「勝たせてもらってサンキュー」とバカにしていたのが、「よくやったな!」とベアーズの頑張りを評価しています。同じコールでも意味が逆転しているのが興味深いところだと思います。
(ちなみに、2,4,6,8とか言ってるのは、単にeightとappreciateで脚韻を踏みたかっただけでしょうね・・・別に数字自体に意味はないと思います)
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