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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

『バーバリアン』(2022, アメリカ) 民泊ホラーという新境地(ネタバレなし)

www.youtube.com 10月はハロウィン月間ということで、特に英語圏では新旧問わずホラー映画が話題に上りがちな印象がある。自身もそれを受けて自宅で鑑賞したのはほぼ米国産ホラーだった。その中でも印象に残ったのが、『バーバリアン』である。まずディズニ…

サンドラ・ブロック&ブラッド・ピットのバディ映画二本立て(『ザ・ロストシティ』&『ブレット・トレイン』)

www.youtube.com www.youtube.com 今年2022年は、ブラッド・ピットとサンドラ・ブロックが共演する映画が2本も日本で上映された。6月はラブコメ・アドベンチャー映画『ザ・ロストシティ』が、9月はアクション映画『ブレット・トレイン』が公開された。 ブラ…

2022年10月の3点(ホラーを中心に)

10月といえばハロウィン、ということで、大体この時期になるとホラーばかり見るような習慣が近年出来た。しかしながら、新作映画はほとんど見ることができなかったので10月の3点は配信作品のみである。 ①米Criterion Channelの"80s Horror"特集 ②映画『バー…

延期され続けた『ニュー・ミュータント』(そして公開すらされない『バットガール』)

満を持して見た。それほど期待していなかった分、大きな失望もなかったのが実感だ。『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』と同様に、90分未満で物語が収束するのは本作最大の強みだったと思う。 既にインタビュー等で言及があった通り、違う者同士が…

『シー・ハルク』前半(第1話から第4話まで) 所感

www.youtube.com ・「オリジン・ストーリー」は控えめにして、笑いを散りばめつつ、最低限のことだけ語ってしまう簡潔な語りが良かった。「キャプテン・アメリカいじり」はたしかに若干やり過ぎだったかもしれないが、本人の人となりが分かる描写だったとは…

『NOPE ノープ』 動物たちとスペクタクル

(ネタバレあり) もう先月のことになったが、『NOPE ノープ』は待望のジョーダン・ピールの新作である。本作は『ゲット・アウト』(2017年)『アス』(2019年)に続く長編第3作である。端的に言えば、本作は動物映画であり、モンスター映画である。『ノープ』…

『スクリーム』 (2022) 2020年代に世に問うメタ・ホラー

『スクリーム』(2022)を先日見た。日本では劇場公開されず、DVDスルーされた作品である。 スクリーム (2022) (字幕版) メリッサ バレラ Amazon 本作は、シリーズ第一作の『スクリーム』(1996年)と同題であるため、そのリブートやリメイクかと思っていたが、…

リコリス・ピザ PTAの描く1970年代のLA

リチャード・リンクレイターの描く60年代のテキサスでは、主人公の周りにいたのはNASAで勤める人たちばかりであったように(『アポロ10号 1/2』)、今回ポール・トーマス・アンダーソンの描く70年代のカリフォルニアでは、映画業界の人間ばかりが出てくる。こ…

『エルヴィス』大佐とウェルズ

最近音楽家の伝記映画について考えることが増えたので、ぜひ見なくてはと思い鑑賞した。 『エルヴィス』は、バズ・ラーマン監督独特の豪華絢爛なタッチでエルヴィス・プレスリーの半生を描いた伝記ものである。2時間半を超える作品であるため、若干冗長な箇…

『人質』(2021) このファン・ジョンミン「本人」の誘拐脱出劇はメタ的スリラー

www.imdb.com ファン・ジョンミンが本人役として誘拐されて、知恵と腕っぷしだけで脱出しなければならないーーーという、奇抜な設定には当初半信半疑だったものの、やはり俳優ファン・ジョンミンを巡る評価が結構本筋と関わっていたのは良かった。 最後は2年…

2021年ベスト10

今年は劇場公開作を58本見た。ベスト10は以下の通り。 ①ラスト・ナイト・イン・ソーホー ②ドライブ・マイ・カー ③先生、私の隣に座っていただけませんか? ④サマーフィルムにのって ⑤アメリカン・ユートピア ⑥キャンディマン (2021) ⑦クワイエット・プレイス…

2021年10月の3点 

『アイダよ、何処へ?』(ヤスミラ・ジュバニッチ監督、ボスニア他) 同監督の『サラエボの花』は未見なのだが、この映画には圧倒された。窓の外を眺める横顔、そしてフェンスごしに見える顔を真正面で捉えるショットがとても印象的だった。ちなみに、本作にお…

韓国のデスゲームドラマにおけるノスタルジーとアメリカ 『イカゲーム』小論

近年、世界で最も話題になった韓国映画が『パラサイト』だとすれば、今年最大の韓国産の話題作は本作だということになる。ともすれば、韓国社会の格差が注目されるのは当然のことであり、その点に関しては既に日本語の評論もあるので、今回は「ノスタルジー…

『サマーフィルムにのって』時代劇と青春恋愛映画は通じ合える

主人公ハダシは大の時代劇好きだが、高校の映画部で自分の撮りたい映画が撮れていない。その映画部では、来る文化祭にて上映予定の恋愛映画を撮影中だからだ。その青春映画に対抗すべく、SFマニアのビート板と剣道部のブルーハワイ2人とオリジナル時代劇を独…

2021年9月の3本

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』 ykondo57.hatenablog.com 今月はオリジナル脚本3本の映画を選んだ。 『先生、私の隣に座っていただけませんか?』で、やはり2時間以内で初めて出会う登場人物たちの人生に入り込んで、ともに泣き、笑い、気づけ…

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』相互反応する漫画と映画(ネタバレあり)

一応忘備録として映画レビュー用SNSのLetterboxdに2021年度映画鑑賞作に暫定的なランキングをつけているのだが、9月末時点でトップ3にあるのが、『ドライブ・マイ・カー』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『サマーフィルムにのって』の邦画3本だ…

『プロミシング・ヤング・ウーマン』復讐の天使カサンドラ

個人的な予想とは大きく異なる内容であり、なおかつ今年最も鑑賞後に考え続けていたのが『プロミシング・ヤング・ウーマン』だった。インタビューでも監督エメラルド・フェネルは主人公キャシーを「復讐の天使」として描くため、あえて以下の写真のような演…

2021年8月の3点

『ザ・スーサイド・スクワッド』 リブートとしての成功例。DC映画は良くも悪くも本当に何を繰り出すのが全然読めない。 ★評論 Morris, Borgan. "Is The Suicide Squad the beginning of the end for the superhero movie?" (The Guardian) www.theguardian.c…

『スーサイド・スクワッド』評論抜粋拙訳 (スーパーヒーロー映画は西部劇と同じ運命を辿るのか?)

ジェームズ・ガン監督の『ザ・スーサイド・スクワッド(副題略)』(2021)を先日観た。大作映画の「リブート」こと「やり直し」ほどみっともないこともないのだが、このバージョンを鑑賞できたことには感謝しかない。 鑑賞後色々感想や評論を読んでみたが、以…

Letterboxdのスタッフ・セレクション(2021-08-16時点)

去年から使い始めているLetterboxdは、運営スタッフの「6選」が随時更新されている。更新時期をあまり把握できていないのだが、変わるたびにメモしている。 CREW PICKS 今日の時点では上記の通り。劇場にて上映中か、近日にストリーミングが始まった作品が6…

「夏の自由研究」メモ

毎年この頃になると、一応「夏休み」なのだから、色々勉強しようと気になる。例えばアメリカでも「夏の読書リスト」や「サマースクール教材」がネットでも散見されるようになっているので、メモ程度にいくつか以下に挙げておきたい。 www.nhk.jp www.nhk.jp …

2021年7月の3点

どうやらパンデミック下の日本の首都にて、世界中からアスリートが終結する4年に1度の大イベントが今なお強行されており、その存在を思い出す度に不愉快な気持ちにさせられる*1のだが、とりあえず7月見た作品から3点選んだ。 ☆『プロミシング・ヤング・ウー…

『ブラック・ウィドウ』における楽曲「アメリカン・パイ」の意味

『ブラック・ウィドウ』を見ていて、驚いたと同時に強い感銘を受けたのは以下の曲が回想シーンで使われていたからだ。 www.youtube.com 『アメリカン・パイ』は1971年にアメリカのシンガー・ソングライター、ドン・マクリーンによるヒット曲である。フルバー…

フローレンス・ピュー in『ブラック・ウィドウ』

※【ブラック・ウィドウ パート1】と銘打っておきながら、今回の投稿ではスカーレット・ヨハンソンの話は出てきません。あしからず。 フローレンス・ピューの目覚ましい最近の活躍ぶり! 2019年の11月に『ファイティング・ファミリー』(スポーツ映画の傑作) …

全米各紙による2021年前期ベスト映画作品*5

" data-en-clipboard="true">7月と言えば、各紙?の前期ベストが公開され終わるタイミングなので、忘備録を兼ねていくつか以下に列挙します。記事選定基準は特にありませんが、やはりほとんどが日本ではまだ公開されていないようです。個人的には『バーブ&ス…

『ゴジラvsコング』: つくられた二項対立

(ネタバレあり) 言わずと知れたゴジラとキングコングという「知的財産」(intellectual property, IP)が直接対決するモンスターバース完結作である、が・・・・? 迫力たっぷりのアクション 四の五の言う前にまず確認しておきたいのだが、これは怪獣映画な…

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』

音を立てると突如襲い掛かる謎の怪物への反撃法が既に判明している本作では、得体の知れない脅威が生み出すホラー要素というよりも、家族(母、長女、長男、そして生まれて間もない乳児)が別々に行動を取ることにより、互いの身を十分に守れる状況にないこと…

Stones in Movies Part II: ローリング・ストーンズと映画 再び

ykondo57.hatenablog.com ↑にも書いたのだが、『クルエラ』は面白かった。面白かったのだが、冷静になって考えてみると、音楽面で違和感も残る。たしかに自分でも知っている「クラシック・ロック」をがんがんかけて物語の駆動感を維持していたが、最後のシー…

2021年5月の3点

・『ファーザー』 「感動作」かどうかは実際に見てみて決めてもらえればいいと思う。個人的にはそういうことではあまりないと思ったのだが。一見地味そうなイギリスのヒューマンドラマだが、作品の中身自体はなかなかショッキングで、描き方によっては煽情的…

『ジェントルマン』(2020・英)

ガイ・リッチー作品を全く通ってこなかったので、『ジェントルマン』が初鑑賞作品となった。時系列を巧みにシャッフルする構造に我々は既に慣れ切っているがそれでもその特有の面白さは感じられた。さらに映画の中の「映画みたいな物語」として本筋をヒュー…