ドラマ
ジュスティーン・トリエ監督の『落下の解剖学』はカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した作品で、トリエ監督の長編作品としては4作目に当たる。物語としては、フレンチアルプスの山荘に息子と暮らす主人公サンドラの夫が謎の落下死を遂げる。やがて事故死の可…
思いがけない形で、とても懐かしい曲を映画館で聞くことになった。 "Somebody That I Used to Know"である。2011年の曲なので、10年以上も前のヒットだということで驚いた。『ザ・ガーディアン/守護者』という韓国映画でこの曲がいわばライトモチーフとして…
2023年のベスト10は、 ①バービー ②パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女 ③別れる決心 ④フェイブルマンズ ⑤ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい ⑥ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー ⑦SHE SAID/シー・セッド その名を暴け ⑧Blue Giant ⑨スパイダーマン:アク…
スティーブン・スピルバーグによる『フェイブルマンズ』は、スピルバーグ少年が映画に目覚め、監督を目指すようになるまでの実体験を基に作られた映画である。スピルバーグの姓が本作ではフェイブルマン(Fabelman)、つまりお話、物語(fable)を想起させるもの…
『グランツーリスモ』を観た。ちなみに、私はプレイステーションのゲーム「グランツーリスモ」をプレイしたことがない。この映画は、主人公がレーシング・ゲーム(厳密には"シミュレーター"らしいが)の敏腕プレイヤーから現実のレーサーになるという嘘みた…
『バービー』グレタ・ガーウィグ監督、アメリカ 真っ直ぐに語られるフェミニズム的メッセージ、往年の名作へのオマージュやパロディ、そして何よりも観客を笑わせてくれる要素を持つ娯楽大作にして、長編は3本目のグレタ・ガーウィグが世に問うた現時点での…
ykondo57.hatenablog.com (↑の続き)その二作品とは、スーパーヒーロー映画『ザ・フラッシュ』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のことである。前者ではフラッシュが新たに発見した自分の能力を使って過去に戻って母親の死を食い止めた…
『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』(ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン監督、アメリカ) www.youtube.com 冒頭のグウェンパートだけの映画も見てみたい。 『ザ・フラッシュ』(アンディ・ムスキエ…
www.youtube.com 当初、グレタ・ガーウィグがバービー人形の映画を撮ると聞いて、驚いていたのだが、今回『アクロス・ザ・スパイダーバース』や『ザ・フラッシュ』(2本については後日記事を書きます)の鑑賞前に見た『バービー』の予告編を見る限り、これは…
「おもろい以外いらんねん」「きみだからさびしい」など繊細な感性で紡がれた作品で知られる大前粟生の小説「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」を映画化。京都にある大学の「ぬいぐるみサークル」。「男らしさ」や「女らしさ」というノリが苦手な大学生の…
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:Volume 3』 ykondo57.hatenablog.com 『クリード 過去の逆襲』 ykondo57.hatenablog.com 『それでも私は生きていく』 劇場で見た初めてのミア・ハンセン=ラブ監督作になった。前作の『ベルイマン島にて』では、自身…
イタリア系アメリカ人のJ.Rと、彼と出会い交際を始める女性(役名はThe Girl)との関係を描いた90分ほどの人間ドラマで、マーティン・スコセッシの長編デビュー作だ。 この映画は、後に彼が何度も形を変えて描くことになる、宗教と世俗の世界の間で葛藤する主…
『クリード 過去の逆襲』は「ロッキー」シリーズのスピンオフとして始動した「クリード」シリーズの3作目であり、主役アドニス・クリードを演じるマイケル・B・ジョーダンが監督として初めて撮った長編映画でもある。本作ではもうロッキー役としてスタローン…
最近映画についての映画が多い、というのは既に言われていることなのだが、脚本も兼任している監督たちが話し合って決めたことではないので、当然各々の作品における映画の扱い方も微妙に異なってくる。サム・メンデス監督の『エンパイア・オブ・ライト』の…
ランキング参加中映画 映画愛に関する映画となると、郷愁的か湿っぽい映画になりがちだろう、とか『ニュー・シネマ・パラダイス』のような類の映画か、などと思ってしまうが、『エンドロールのつづき』はより根源的なレベルで映画という光の魔法に迫る良作だ…
一応忘備録として映画レビュー用SNSのLetterboxdに2021年度映画鑑賞作に暫定的なランキングをつけているのだが、9月末時点でトップ3にあるのが、『ドライブ・マイ・カー』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『サマーフィルムにのって』の邦画3本だ…
『ザ・スーサイド・スクワッド』 リブートとしての成功例。DC映画は良くも悪くも本当に何を繰り出すのが全然読めない。 ★評論 Morris, Borgan. "Is The Suicide Squad the beginning of the end for the superhero movie?" (The Guardian) www.theguardian.c…
どうやらパンデミック下の日本の首都にて、世界中からアスリートが終結する4年に1度の大イベントが今なお強行されており、その存在を思い出す度に不愉快な気持ちにさせられる*1のだが、とりあえず7月見た作品から3点選んだ。 ☆『プロミシング・ヤング・ウー…
『ブラック・ウィドウ』を見ていて、驚いたと同時に強い感銘を受けたのは以下の曲が回想シーンで使われていたからだ。 www.youtube.com 『アメリカン・パイ』は1971年にアメリカのシンガー・ソングライター、ドン・マクリーンによるヒット曲である。フルバー…
今やドラマでも映画でも大活躍中のエリザベス・モスの出演作よりとりわけおすすめしたい3本を選んでみました。 『ザ・ワン・アイ・ラブ(The One I Love) 』(2013)(あえて訳すと『私の愛する人』) 関係が悪化中の夫婦がセラピーとして向かった先にいたのは…
以下は『エンドゲーム』短評の拙訳だ。コンパクトに注目点がまとまっていたので紹介する。 https://www.vox.com/culture/2019/4/26/18518556/avengers-endgame-review 待望の「アレ」がやってきた。MCUの「インフィニティ・サーガ」の"非"公式な大フィナーレ…
ジャン・リュック・ゴダールの新作『イメージの本』が日本で一般上映される日もそう遠くはないはず、なのだがいまいちどういう映画なのか分かっていなかった。そこで、たまたま自分がぶつかった情報を軽くまとめてみた。 まず始点は蓮實重彦。以下のツイート…
下半期の映画について。 前回の投稿に続き、まず2018年の映画ではない話からになってしまう。去年公開の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、「賛否両論」という表現が付きまとう映画だった、と個人的には記憶している。その「否」の意見が、建設的な批…
今年も残りわずか。とりあえず今年の前半を振り返ってみたい。 と言いつつも、厳密には2017年12月に封切となった松岡茉優初出演作『勝手にふるえてろ』についてまず言及したい。(この映画、年は跨いでいるので一応2018年の映画ということで話を進める) 本編…
ポッドキャストの第五回をアップロードしました。ロッキーシリーズの事実上続編の『クリード』について、未来世紀サクライの韓くんと話しました。 前編 今回は新たなゲストをお呼びして、『ロッキー』シリーズのリブート作品である『クリード』について論評…
もうエピソード7の公開まで一か月切った今ですが、スター・ウォーズ旧3部作及び新3部作の内どれが最高傑作とされているのでしょうか。Imdbという英語圏最大の映画レビューサイトから探っていきたいと思います。 ざっくりとリストアップしてみると、以下の…
『カメレオンマン』はウディ・アレンによるモキュメンタリ―で、ゼリグという、あるトラウマ的経験をきっかけに、カメレオンのごとく周りに合わせて変態する人間になってしまい、アメリカ社会でセンセーションになってしまう男を描いたコメディ作品です。 ド…
幸運にも、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』DVD・ブルーレイリリース記念の試写会に行ってきた。ブルーレイ上映なので、画質の点で序盤は若干気になったものの、本作に再びのめりこむのにはさして時間はかからなかった。 当作品に関しては、来週に…
遅ればせながら、ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド』を字幕版にて鑑賞。この夏休みの新作ラッシュによって、吹き替え版ならまだしも、字幕版がほとんど上映されていないことに気づいて、急いで観て来た。 マッド・マックス試論(解説・分析) - アメリ…
今回の考察対象の『バグダッド・カフェ』は1987年の西ドイツ映画で、当時のアメリカでもヒットした、日本でいうミニ・シアター系の映画だ。完全版でも100分強というコンパクトな尺で、泣き笑いしながら観る事の出来る映画になっていると言える。 (以…