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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

自宅二本立て#1 [『好きだった君からのラブレター』(2018)& 『セットアップ』(2018) ]

 皆が家にいる時間が必然的に増えてきた今だからこそ、気軽に見られるコメディ二本立てをこれから継続的に挙げていければと思います。基本的にはアメリカのコメディから。とりあえずまずはネットフリックスのラブコメ、『好きだった君からのラブレター』(2018)と『セットアップ』(2018)。


To All The Boys I've Loved Before | Official Trailer | Netflix


Set It Up | Pizza Scene | Netflixじた

 どちらもウソの設定が現実になっていく、という王道パターンの映画ですが、現代的なひねりも加えてあるのがとても良いです。『好きだった君へのラブレター』の反響は随分良かったようで、既に続編が作られており、ネットフリックスで現在配信中です。続編も良かったですが、1作目の監督スーザン・ジョンソンによる『マイ・プレシャス・リスト』(2016)もおススメです。あと、『セットアップ』の主人公は『ゾンビランド:ダブルタップ』(2019)にも出てます。

 

新型コロナウイルス関連記事まとめ「いかにこのパンデミックは終息するのか」

 新型コロナウイルス(COVID-19)に関する最近の英語記事の中で最もよかったと思う記事が米国The Atlantic紙の著名サイエンスライターEd Yongによる"How the Pandemic Will End"(いかにこのパンデミックは終息するのか)という記事です。

 各ニュースサイトから選りすぐりの長文の調査記事ないしノンフィクションの読みものを紹介するLongformの「今週の一本」(英語の記事をじっくり読むことに興味がある方にはとてもおすすめのニュースレター(メールマガジン)です)にも選出されています。

www.theatlantic.com

 その記事から印象に残った点をいくつかまとめてみました。ただし、主にアメリカの状況分析に関する点であることはご注意ください。

・本来であれば、今回の「パンデミック」のような事態に対するアメリカの「準備度」は世界最高水準。しかし今回のアメリカの対応(トランプ政権の対応)は遅きに失した。

・インフルエンザよりも致死率は高い

・タイトルにある通り、このパンデミックがどのように終わるのか、想定できるシナリオは以下の3つ。


1)世界各国が同時にウイルスの制圧に成功する→可能性は極めて低い


2)大勢が感染して、「集団免疫」をつける→大量の人々が死亡し、医療機関も崩壊しかねない点において、あまりにも代償が大きい


3)「モグラたたき」(集団感染が発生すればその都度ただちに対処する、という過程を何度も繰り返す)で時間かせぎ→最も時間がかかるしややこしい、ワクチンも開発に12から18か月かかるし、そこから大量生産して流通させるのはもっと時間がかかる
アメリカの場合、最低でもここ1年は残り続ける問題

 

・上記のシナリオについて考える上で重要な要素
a)季節性→これは不明、b)免疫の継続期間→2,3年くらいか?

 

アメリカ人の価値観と衝突するパンデミック 
個人主義、例外主義、抵抗として好きなことをするという考え方→外出してしまう
→中国で起こっている「対岸の火事」を「対岸」にとどめておけば大丈夫だ、という発想→いざウイルスが到来したときに露呈した国の脆弱性

 

・9.11後、アメリカはテロリズムに注目し続けてきたが、今やそれが公衆衛生へとシフトするかもしれない。こういった事態の可能性を重要視せず、民主も共和党も予算を削ってきたことが響いた 

 

 本文はもっと微に入り細を穿つような文章になっていますが、それでいてとても読みやすいです。素人と専門家とをつなぐサイエンスライターの面目躍如といったところでしょうか。ちなみに筆者Ed Yongのニュースレターはこちらです。

tinyletter.com

 

 

 

2020年 2月 鑑賞録 (長回しなどについて)


‣残念ながら劇場公開はなかった『アンカット・ダイヤモンド』(英:Uncut Gems)、MBA選手や歌手に本人役を演じさせる贅沢な映画であると同時に、70年代のNY犯罪映画を想起させるようなひりひりとした街の「危なさ」が随所ににじみ出ている。バスケ賭博を山場に持ってくるような映画なので、見ていて大変胃が痛い。

‣『ナイブス・アウト』、ジャンルのお決まりを捻るのが巧いライアン・ジョンソン監督による傑作ミステリー映画。同監督による『ブリック』が完全にハードボイルドものの展開をしていながら、主要人物は全て高校生という異色の傑作だったなら、また『最後のジェダイ』は、ルーク・スカイウォーカーの過去を『羅生門』的語り(語り手それぞれの話が食い違う語り)でもって明らかにしていく作品だったなら、この作品はアガサ・クリスティー原作の映画群をアメリカを舞台に変更した正統派ミステリーだと言える。(こう考えると、ジョンソンがなぜあそこまで奇怪なスターウォーズを作ったのか、その理由が少しばかり説明ができると思う)

‣『ハスラーズ』、なかなかどんな人にでも勧められる映画はないように思うが、今年だとこの映画を選ぶと思う。『グッドフェローズ』とつい比べてしまいたくなる気持ちがあるのだが、そんな陳腐な比較をはねのけるほどのエネルギーに満ちた映画だと思う。
 印象に残ったのは、登場人物の歩行を長回しで捉えたシーンだった。主人公が初出勤日にストリップクラブの中を歩く冒頭のシーンは、本編の基本設定を分かりやすく画で見せるだけでなく、彼女本人がうまくここでやっていけるかという不安が継続していく様を見せるシーンでもある。また、主人公が学校に娘を送り出すところでも、本人の強烈な身なりのせいで、周りから白い目で見られる。姉御肌のラモーナがATMに歩いていくシーンも長回しなのも、本作を観た人ならその必然性がわかるだろう。長回しであるがゆえに、我々もその場から抜け出すことが出来ない居心地の悪さを共有することになる。

‣『1917』と『ロングデイズ・ジャーニー』、両作とも「長回し」がよく話題に上る映画ではあるが、当然その意味は大きく異なる。

‣『1917』の長回しが持つ効果は、もちろん没入感や、上述したような「抜け出すことが出来ない」感覚をもたらす。それらに加えて指摘しておきたいのは、脚本を巡る制約だ。全編が疑似ワンショットの本作は、すなわち一直線で語りきらなくてはいけない物語である。それゆえ、野暮な回想シーンや、本筋を混線させるような、主人公以外の人物を中心に据えるシーンを必然的に廃する脚本が要請された。この点は本作を語る上でかなり大きい点だと思う。

‣『ロングデイズ・ジャーニー』の長回しは、『1917』と比べると実はかなり制約を取り払ったかのように思えた。何せ空を飛んでみせるのだから。

 

 

ykondo57.hatenablog.com

 

2020年 1月 鑑賞録

 
‣『パラサイト』や『エクストリーム・ジョブ』については別稿で少し書いた。パラサイトについてはもう少し書いてみたい。
今のところ今年のツートップ。
 
‣『ロング・ショット』はとても良かった。去年から期待していた政治ラブコメ
 
‣『ジョジョ・ラビット』は『スウィング・キッズ』と比較して考えてみたくなるような選曲だった。
 
‣『9人の翻訳家』は、冷え冷えとした色調の映画ではあるが、とても「熱い」シーンがいくつかあった。ネタバレを避けて例えを使って言うと、アベンジャーズも顔負けのチームプレー、あるいは『フレンチ・コネクション』(そういえば『キャプテン・マーベル』でもやっていた)ばりの電車 vs. 自動車のチェイスがとても印象的だった。
 
‣『フォードvsフェラーリ』は対決ものというよりも、フォード内の葛藤を描いたものとして見るのが妥当だった。「ドア」を巡る展開が忘れられない。注意して見るだけ得られるものがある良作だった。

Letterboxdはじめました

 何年もFilmarksを映画鑑賞用SNSとして使っていたが、最近letterboxdの方に移行することにした。
 
 基本的に使い方は同じだが、日本版はまだなさそう。映画のリストを作るのにすごく長けているサイトで、さっそく今年の1月から見た映画のリストを暫定的なランキングを付けた上で作ってみた(↓)。 結構スタイリッシュな仕様で、背景色が基本的にダークブルーなのも気に入っている。着眼点の面白い映画リストが豊富で、おすすめの作品を探すのにも重宝しそう。
 

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』 はすでに「成功」だと言える理由

 日本では、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』(以下"Birds of Prey")の公開を3月まで待たないといけない。しかし、鑑賞前からすでにこの作品は「成功」を収めていると言える。
 
 その理由は3つ。一つは、予告編が素晴らしいから。『スーサイド・スクワッド』の予告編における「ボヘミアン・ラプソディ」の使い方がこの上ない出来だったことを思い出せばいいかと思うが、本編より予告編の方がはるかにわくわくするし面白いという困った前例をDCEU(DC Extended Universe)は作ってしまった。*1
 そのことを踏まえると、『Birds of Prey』に少しばかりの不安要素が残るのだが、いずれにせよ『愛の賛歌』(もちろんエディット・ピアフのオリジナル)をとても効果的に使った予告編だったと思う。予告編というものはそもそも映画というより、PVみたいなもので、印象的な音楽と印象的なシーンをテンポよくつなぎ合わせれば*2成立しそうなものだが、ここまで予告編単独で「立つ」ものはなかなかないと思っている。*3
 
 もう一つは、監督も役者もほとんどが女性を起用しているから。『ブラックパンサー』のキャストの多くが女性であったことや、『キャプテン・マーベル』では監督も主役も女性、という変化がマーベル映画に見られる。しかし、後者に関しては『ワンダーウーマン』が数年先に女性タッグを組んでおり、全ての面でMCU(Marvel Cinematic Universe)が先陣を切っている訳では決してない。作品そのものでは結構苦労しているシリーズではあるが、ワーナーは結構マーベルもやってこなかったことをさらっとやっている組織ではある。そこはちゃんと観客も分かっているべきだ。しかも、監督はアジア系アメリカ人の監督だ。今までアジア系アメリカ人を主人公にした映画に注目が集まる中、女性かつアジア系の監督がアメコミ大作を任されるということは、相当珍しいことだと思う。
 
 最後は、最高の飛び蹴りシーンが予告編で見られたから。飛び蹴りとは韓国映画の専売特許のようなものだと勝手に思っているが、個人的に見た中では2020年において最も早いタイミングで見た飛び蹴りだったのでこれも勝手に書き記しておく。

*1:というか、この曲をユーモアとリスペクトをもって使っていたのは『ウェインズ・ワールド』の名シーンであり、おそらくそれをこの予告編は参考にしていることは間違いないと思う

*2:もちろん、言うは易し行なうは難し

*3:日本では日本語カバーのバージョンも相当お馴染みな曲だろう。これ、例えばアメリカ人にとっても、『ボヘミアン・ラプソディ』ほどではないにしても、割とベタな選曲だと思う