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アメリカンに映画を観る!--- 洋画見聞録

主にアメリカ映画・文化について書きます。たまに関係なさそうな話題も。

ポッドキャスト予定告知~エクスマキナ、来るべきポケモンGO、アメリカ政治を予言したおバカ映画

久々にポッドキャストを更新しようと思います。この先数日で更新を予定しております。

現時点で話す予定の内容は、そろそろ関西圏でも上映が終わりそうなSFスリラー『エクス・マキナ』の解説、いつになったら来てくれるのか分からないポケモンGOと、アメリカ文化、社会との関連、そして、トランプ氏が共和党候補確実となってしまった現実を、不運にも予言してしまったと話題の映画についても話そうと思います。どうぞよろしくお願いします。

 

映画Fake感想(ネタバレなし)

 森達也監督の『FAKE』(2016年)を観てきた。ネタバレなしでは、あまり突っ込んだ議論は出来ないので、あくまでも軽い感想に留めておく。

 とんでもない映画である。

 個人的にドキュメンタリー映画を敢えて好んで見るようなことはしないのだが、2年以上前にゴーストライター騒動で話題になった佐村河内守をカメラに収め続けた、しかも衝撃のラスト12分がパンチラインとなっていたドキュメンタリー映画として話題になっていたので、映画館に足を運んだ。

 「コメディ」として見ていた評者もいたように、たしかにくすっと笑えるシーンは少なくない。夕飯のおかずに全く手を付けず大好きな豆乳をただただ飲むという滑稽な場面や、所々で挿入される猫の愛らしい表情には笑ってしまった。

 そんなコミカルなシーンはあったものの、最後まで観てみると、判断を綺麗に下させてくれない作品になっている。軽く数えても、主張点が3,4回は反転させられていたように思う。

 その展開に驚かされた一方で、これをまともに純粋なドキュメンタリーと捉える視点も森監督のやろうとしていることとまた別の話だろう。

 自分もその頃はツイッターでよく友人が佐村河内守ネタ投稿をリツイートしていて、それとなく現状の認識はしていたつもりだが、実際この映画を観てみると、例えばフジテレビのバラエティ番組や、週刊誌の取り上げ方には辟易としてしまう。そもそも、ネット上の大喜利に喜々として乗っかかり、少しでも他人のタイムラインを風刺でもって盛り上げようとした人間の何割が彼の手掛けた音楽を知っていたんだろうか。僕自身もこのスキャンダル以前はほとんど知らなかった。

 さらに、ゴーストライター問題と、耳が聞こえないフリをしていたという問題に対して、同じ論じ方をするのはおかしい気もする。二重の悪事を働いていた、という観点から批判していたのだろうとは思うが、後者に至っては、いわゆる耳の聞こえる人/聞こえない人の二元論で話を考えようとするから話がおかしくなってしまう。じゃあその狭間にある状態の人たちはどうなるのか、世間が聴覚障害についてあまり詳しくないんじゃないか(例えばメガネを掛けている人のことを視覚に障害があると、まず考えない一方、補聴器を装着している人はその人の聴覚について少し意識することがありえるという非対称性があると個人的には思う)と思った。

 余談になるが、最近、週刊文春がスクープを連発していて、停滞ぎみなジャーナリズムにまた新しい風を吹かせていると思っていたが(ゴーストライター問題もそのスクープの一つ)、そのスクープで、日本国民が全体として救われているのか、と言われると違和感しか残らない(直近の話題で言うと、舛添を引き摺り下ろした結果、さらなる税金の大いなる無駄遣いが生じた。本当にバカを見たのは誰なのか、都民は少し考えた方がいいんじゃないか。まあ一連のスクープのおかげで文春は売れるようになっているのだが)。文春には元気に頑張ってほしいとは思う一方で、世間がそれにどう反応していくかは、一人一人がしっかりと頭を冷やして考えないといけないのかなと思った次第。

レヴェナント 元ネタ集

 前回のポッドキャストでリンク貼りますと言っていたが、まだ貼っていなかったので、以下に掲載しておきます。

 

The Revenant by Tarkovsky on Vimeo

 

この動画を見れば分かるように、本作というのはオマージュ満載なのだ。しかし、コメント欄を見ると、それが果たしてオマージュなのか、あるいはパクリなのか、とちょっとした議論になっている。最近レッド・ツェッペリンの代表曲『天国への階段』がパクリだとして訴訟させていたが、あんまり意味のないような気もする。上手く自分で消化出来ていない映画は、いくら良い映画から取ったところで面白くないし。 

マッドマックス解説・分析 ポッドキャスト抄録

 『アメリカンに映画を観る!』のポッドキャスト版(→

(新)アメリカンに映画を観る!)の第一回で触れた、『マッドマックス:怒りのデス・ロード』についての記事に残しておこうと思っていたが、随分経ってしまっている。今度新たなエピソードをアップすると、直近の15回までしか反映されないRSSなので、ブログの方にしか残らないことになってしまう。という訳で、軽くポッドキャストで話した論点をまとめておきたい。

www.youtube.com

 個人的に当作で注目したのは、もちろんフェミニズム的から論じることもそうだが、「赤と青」だった。目を見張るようなアクションシーンの数々で見かけるこの真っ赤な炎が印象的だった人も少なくないかもしれない。

 

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http://screenrant.com/wp-content/uploads/Mad-Max-Fury-Road-explosion.jpg

 

 このかなり赤い炎と絡めて言及しておきたいのが、Capable ケーパブルの真っ赤な髪だ。

 

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http://66.media.tumblr.com/8c69f8cc14f986ef333e7683a1d8f024/tumblr_nqsfe17QLK1rylr5to1_400.gif

 どっちもこれでもかと言うほど赤い。それがどうしたと思われるだろうが、ポッドキャストで話した内容に戻ると、これはイモータン・ジョーの教義と関係してくると言える。つまり、"I live, I die, I live again" 生きて死にまた生き返ると豪語する、瀕死のウォーボーイ、ナックスが言うように、「現世がたとえ辛くとも、立派なウォーボーイとしてイモータン・ジョーに仕えることで来世では報われる」というイモータン・ジョーなりのカルト的な教義(このテーゼ自体は宗教そのものに通底するものではあるが、何故イモータン・ジョーなのかという質問には答えられない)をそのまま受け入れてしまっている。

 このドグマと赤色を繋ぐものとは、すなわち不死鳥のイメージ(=再び息吹を取り戻す生のイメージ)なのである。死を確信した不死鳥こと火の鳥は、炎に焼かれることでまた新たな生を得る。そして、ナックスは壮絶な戦いの中で、逆説的に自分が生きていることを身でもって体験する。

 それと対照的なのは、夜になった際、スクリーンを覆う青色だ。これはまさしく、死のイメージであって、何も育たない不毛の土地にマックスたちはたどり着く。敵たちも、まあなかなか陰惨なことになる。ちなみに、盲目になり、目かくしをして銃を乱射していた彼

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http://madmaxmovies.com/forum/download/file.php?id=3381

が叫んでいたセリフは「俺は正義の天秤だ!」と言っていて、要は自分は正義の女神なんだと言っている(正義の女神は、公平性を保つという意味で目隠しをしている)。かなり皮肉なのは言わずもがなである。

 さて、本題に戻るが、そういった青=死のイメージと対置させると、先ほども述べたが赤はまさしく不死鳥のイメージ、さらに言うならば敗者復活戦のイメージすら思わせる。ナックスの語源はNux, Nothingであって、彼は取るにたらない、無の存在であって、イモータン・ジョーにとってはただの捨て駒だ。しかし、あれだけいる女性集団の中から一人、彼を一人の人間として接しようとする女性がいた。ケーパブル(有能)である。

 何やかんやで、ナックスがイモータン・ジョーの教義から脱却し、彼に反逆しようとするのは、まさしく彼なりの恋を見つけたからだろうとは思うのだが、理由はともかく、真っ赤な髪のケーパブルと出会うことで、敗者復活戦の機会を得る。

 最後に補足しておくと、マックスがフュリオーサに輸血するシーンがあるが、あれもまさしく深紅の生命を彼女に注入することであって、それゆえ不死鳥のごとく彼女は息を吹き返すと解釈できるのではないか。色に着目してもまあ言えることは多少はあったな、という話です。

 

ポッドキャスト ライブ配信します ”アメリカ映画と社会の今”

 3月分の配信が滞っていたので、今月はその分も兼ねてライブ配信をしたいと思います。

 今回は、『ヘイトフル・エイト』や『バットマンvsスーパーマン』などの作品から、アメリカ大統領選、BABYMETALの全米上陸の件に関してなど、アメリカ絡みの様々なことに関して考えていこうと思います。配信は4月16日(土)の5時半~7時を予定しています。

 質問、要望ございましたら、americannieiga@gmail.com、あるいはtwitterの@ykondo457(「アメリカンに映画を観る!」アカウント)までにお寄せ下さい、よろしくお願いします。

 なお、ライブ配信の音声は編集した上で、ポッドキャストとして後日アップロードします。

ロバート・デニーロの決断とアメリカの流言の闇の深さ

 朝、オピニオンサイトWebronzaを見ていると、こんな記事があった。

 

webronza.asahi.com

 2001年の米同時多発テロ後のニューヨークの再活性化を目指して始まったトライベッカ映画祭に、創設者の一人であるロバート・デニーロ氏が「反ワクチン映画」の上映を企画したが、翻意した。MMRワクチンが自閉症を引き起こすという主張をし、研究不正が明らかになって英国での医師免許を剝奪(はくだつ)されたアンドリュー・ウェイクフィールド博士が作った映画だ。デニーロ氏は先週金曜に「私には自閉症の子どもがおり、この問題について話す機会を提供したいと思った」とコメントを発表。しかし、翌日、上映取りやめを表明した。上映予定が明らかになった月曜から1週間たたないうちに方針撤回となった。(リンク先より)

 日本だと、ワクチンを打つと自閉症になるという副作用なるものを心から信じている人は少ないだろうと思うが、この”ワクチンパニック”は近年アメリカで流布した言説の一つで、ジム・キャリーも真面目に関わっていたこともあって、問題になっていた。ただ、リンク先の記事にあるように、そもそも根拠となる論文がデータを恣意的に変更してウソをまぎれこませていたもので、もはや科学界でこのワクチンの”副作用”はデマにしか過ぎないことは明らかになっている。

 アメリカでは、地球温暖化(global warming)(ただ、気候変動(climate change)の方が適切な表現)をデマだと信じ込んでいる人は未だにいるし、9.11はアメリカの自作自演だという陰謀論を支持する人もいる。ネットにより(私のような素人の言説がばらまかれたり)、きちんとチェックされぬまま出回ってしまう情報が絶えない中、アメリカでは、日本人が信じられないようなデマがまことしやかに語られているという、四月バカみたいだけど、本当の話でした。

 (こんな書き方をすると、日本は例外だと筆者自身が信じ込んでいるような印象を抱かれるかもしれないが、最近だと、STAP細胞が海外の実験によりその存在を確認されたとかいう流言をネットで見た。それに関しては、この記事が詳しく検証している。

STAP細胞をめぐる「流言」を検討する / 粥川準二 / ライター・編集者・翻訳者 | SYNODOS -シノドス-)

 

 

 

アメリカ大統領選というスペクタクル(3)いつになれば予想は当たるのか!?

 今回紹介したいのは、大統領選予想についてのポッドキャスト・動画だ。3月9日の現時点では、共和党からはまたもやトランプ氏が北部のミシガン州、南部のミシシッピ州などの州で圧勝しており、後続勢が彼の勢いをもはや止められるのかかなり不安が募るような状況になっている。しかし、実はこの展開を大手メディアは予測出来ていなかった。

 全米メディアについて毎週示唆に富む分析をしているOn the Media というポッドキャストがあるのだが、単に一週間で何が報じられたのかをまとめてくれるだけではなく、メディアはどこに着目し、如何に報道したのかという点を、メタ的に深く掘り下げていいる。

 

www.onthemedia.org

 そして、今回このポッドキャストが取り上げていたのが、予備選予想だった。

メインパーソナリティ本人が自認している通り、暴言連発のトランプ氏がここまでくると大真面目に考えていた報道はほとんどなかった。むしろ、現在3番手(だが彼が大逆転する可能性はもうあまりない)のマルコ・ルビオ氏を推す動きが大きかった。だが、実際箱を開けてみれば、予想なんてあてに出来るものではなかったことが判明した。

もっとユーモラスにこの問題を扱ったのが、本ブログで幾度となく紹介しているアメリカのコメディーサイトCrackedの動画だ。

 

www.youtube.com

このコメディー集団も、去年のポッドキャストでは、トランプ氏が共和党候補になることは「1000%ない」と豪語していた(上の動画だと右に座っている男性)。今のところそれは見事に外れている訳だが、On the Mediaでも指摘していたように、大統領選予想を的中させるには、サンプル数が足りないのは事実だろう。そもそも、4年に1度しか採れないデータである上に、インターネットという絶大な影響力を誇る要素がある以上、本当に前例はオバマ政権の8年間くらいしかない。

 といったような一連の弁明をした後で、1000%ないと発言していた当人は、予想のアップデートを行う。最終的には、民主党からはヒラリー・クリントン共和党からはマルコ・ルビオが選出され、ルビオが勝つと予想しているが、これは当たるのか?